研究最終年度に当たる平成29年度は、通常の訪問調査活動、ならびに作品発表調査活動と並んで、二つの調査研究活動を行った。 一つ目は、平成29年、2017年が、ヨーロッパの現代美術の大きな三つの芸術祭が同時に開催された年であり、8月下旬にドイツおよびイタリアを訪れ、現地での調査を行った。三つの芸術祭とは、10年に一度開催される「ミュンスター彫刻プロジェクト」(ドイツ、ミュンスター市)、5年に一度の開催になる「ドクメンタ」(ドイツ、カッセル市、およびギリシャ、アテネ市)、および2年に一度の「ヴェネチア・ビエンナーレ」(イタリア、ヴェネチア市)である。この現地調査活動については、現在進行中の研究活動とも併せて、平成30年度内での成果のとりまとめならびに発表を目指し、作業を進行中である。 二つ目の活動は、平成29年、「第7回障害のある人による公募作品展 ぴかっtoアート展 ~それぞれのかたち~」の展示計画ならびに実施を担当したことである。本展覧会は、障害者の生活の質の向上や社会への参画を推進することを目的に、滋賀県ならびにぴかっtoアート展実行委員会が主催し、開催されてきた。本展覧会は、その議決機関ならびに運営主体が県内の様ざまな福祉関係の法人組織からの派遣者を中心としていたため、福祉事業の一環としての性格が色濃かったのであるが、私はこれまでの内外での美術館や展覧会への調査活動の中で確認できた、作品展示に関する知見を適用することにより、知的障害者による作品発表の一つの可能性を提示できたと考える。この取り組みについては、論文「知的障害者による芸術表現の社会的受容に関する一報告 -第7回『ぴかっtoアート展』をめぐって」(成安造形大学紀要第9号)において、報告した。
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