法律事務所におけるソーシャルワークニーズを把握するため実施したアンケート調査(発送数1000件)は、25.3%の回収率で以下の結果が得られた。(調査実施期間:2016年10月~11月)対象者の抽出方法:日弁連HPひまわりサーチに登録する弁護士から無作為抽出 アンケート結果では、82.2%の弁護士が法律相談だけで解決できない生活問題を抱えた事例に対応した経験があった。そうしたなかクライエントの生活問題に対応している弁護士は、43.1%であり、生活支援の必要性の有無については46.2%の弁護士が必要性を認識していた。生活問題の必要性については、弁護士のなかでも男女差及び地域差が認められた。女性弁護士は53.7%、近畿地方在住弁護士は62.2%が必要であると回答し、九州在住の弁護士は64.0%が必要性を感じていないという結果であった。 なお、アンケート結果については、希望する弁護士にデータあるいは「弁護士との連携による社会福祉士の包括的ソーシャルワーク実践に関する実証的研究報告書 2019」の送付を行った。 弁護士へのインタビュー調査では、すでに実践している生活支援事例や生活支援の意義について意見をいただいた。また、弁護士を通して研究協力に同意いただいたクライエントから、生活問題について相談に応じることができた。ソーシャルワーク実践事例としては、刑事事件の被告(クレプトマニアによる窃盗)となったクライエントの生活相談に対応し、法廷において処罰より家庭生活のなかでの治療を優先する必要性について証言した。 今回の研究において、法律事務所における生活支援のニーズは明らかとなり、法律事務所における生活支援は、包括的ソーシャルワーク実践を本務とする社会福祉士の新たな活動領域として期待されていると考えられる。今後は弁護士と連携した生活支援の具体的な実践方法の確立が必要となることが認められた。
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