研究課題/領域番号 |
15K13122
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研究機関 | 関西学院大学 |
研究代表者 |
三浦 麻子 関西学院大学, 文学部, 教授 (30273569)
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研究分担者 |
平石 界 慶應義塾大学, 文学部(三田), 准教授 (50343108)
樋口 匡貴 上智大学, 総合人間科学部, 教授 (60352093)
藤島 喜嗣 昭和女子大学, 生活機構研究科, 教授 (80349125)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 再現性 / 再現可能性 / 社会心理学 / 追試 / QPRs |
研究実績の概要 |
本研究計画は,心理学,特に社会心理学領域における,実験結果の再現可能性の検証を組織的に実施する世界規模の再現可能性検証プロジェクトに参画するために,日本における拠点を構築するものである.具体的には,追試研究の実施の拠点となる研究者ネットワークを形成し,標準化された刺激・手続きの日本語版を作成し,手続きの共有と結果の蓄積・公開をインターネット上で実現する.2017年度の研究実績は,以下の3点に集約できる. まず,自分たちの手で着実に再現可能性の検証を積み重ねるため,標準化された刺激・手続きを共有しうる追試研究を事前登録の上で実施し,その成果を日本社会心理学会の年次大会で3件報告し,参加者と活発な議論を行った. 次に,心理学における実験結果の再現可能性検証の重要性に対する認識を普及させるための取り組みを行った.特に今年度は,心理学の関連領域の学会誌(ヒューマンインタフェース学会誌)特集号への招待論文の掲載や関連する内容を取り扱った著書や翻訳書の刊行,インターネットラジオ番組への出演など,心理学を超えた周辺領域や心理学に関心をもつ一般市民をも視野に入れた活動を展開した. そして,結果の再現性に疑念のある研究ばかりが追試されがち(そして,再現されないという結果が公表されがち)な現状を憂慮し,心理学の今後の発展のためには,頑健な再現性をもつだろう研究の再現可能性にも注目すべきという信念を持って,その追試マテリアルを作成することにも注力した.この作業は現在も進行中で,2018年度にはAdaptive Memoryに関する実験のマテリアルが完成する予定である.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
研究知見の再現可能性に関する学術界,特に心理学界での認識は,特に国際的な動向を見ると,当該研究プロジェクトが科研費研究として採択された頃よりかなり高まっている.こうした変化に伴い,当該研究プロジェクトも心理学界を超えて広く一般の関心を引くようになった.研究実績で2番目に挙げた,心理学を超えた周辺領域や心理学に関心をもつ一般市民をも視野に入れた活動を展開することができたのは,まさにこうした関心の高まりによるものであり,研究プロジェクトに当初の計画以上の進展をもたらしているといえる.
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今後の研究の推進方策 |
当該研究プロジェクトの最終年度にあたる2018年度は,引き続き追試研究の実施とその成果報告を行うとともに,これまでの成果をとりまとめ,そこから新たな展開の方向性を見定めることにも注力して研究を推進する. また「心理学研究において,再現可能性を検証することはとても重要だ」という認識が,周辺領域や一般市民をも巻き込んで普及していることをうまく利用して,「追試によるオープンサイエンス」つまり,再現可能性検証のための追試を手がかりにして,心理学研究とは何かをより広い対象に知ってもらう実践を可能とするための環境整備に着手する.
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次年度使用額が生じた理由 |
2017年度の諸支出の一部を他の研究費で賄うことができたので,未使用額が生じた.これを,期間延長をお認めいただき2018年度も継続してより多くの追試を適切なサイズの対象に実施するにあたり,実験者のアルバイト代や参加者への謝礼など一定のランニングコストのために使用する予定である.さらに,2017年秋に,心理学系の国内学会が刊行する雑誌として初めてLetters on Evolutionary Behavioral Scienceが事前登録・事前審査を経た追試研究論文を募集することになるという情報を得たため,2018年度中にそれに投稿することを目指すことにした.国際誌への論文掲載には英文校閲が必須のため,そのための経費も見込んでいる.
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