研究課題/領域番号 |
15K13127
|
研究機関 | 埼玉大学 |
研究代表者 |
萩生田 伸子 埼玉大学, 教育学部, 准教授 (70292638)
|
研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
|
キーワード | サブグループ / クラスター / 因子分析 |
研究実績の概要 |
特性論および類型論の観点から作成された,いわゆるパーソナリティ検査とは内容が異なるものの複数のサブグループが存在すると想定されている実データ(進路希望に関する調査,進路適性に関するデータ)について,回答パターンに基づいた回答者の分類を試みた.このうち,進路適性に関するデータについては回答内容の詳細および採点方法が発行元によって明らかにされていないため不明な点も残されてはいるが,たとえば職業選択において重視することに基づいて回答者を分類した場合,「他人に評価されなくとも他人に尽くそうと考えるタイプ」「金銭面とやりがいの両方を重視するタイプ」「自分に合った職業を重視するタイプ」など,回答者グループとしてきわめて解釈のしやすいまとまりが見いだされ,さらにそれらが興味を感じる職業分野と整合性のある対応関係を示す等の結果を得た.当初,最終段階として想定していた質的潜在変数を導入するまでもなく,因子分析,クラスター分析を適用するという従来の手法を用いることによって回答者の分類はある程度可能であることが示唆された.さらに詳細な検討が必要ではあるものの,ユーザーの立場からはより簡便な方法で実用に十分耐える結果が得られるのであれば,その方がより望ましいとも考えられるが,その一端が明らかになったと言える.シミュレーションによる検討に関しては,前年度とは異なるタイプの相関ありデータを生成したが,想定通りの結果になったケースとならなかったケースが混在した結果となった.これは人工データの発生方法に問題があった可能性が考えられる.
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
最終的に従来の方法ではなく質的潜在変数を導入することによって特性論と類型論の関係について考察を行うことを想定していたが,実データの分析をおこなった際に,そもそも質的潜在変数を導入するまでもなく,従来から用いられている方法で十分有用である可能性が示唆された点については,当初想定した結果の内の一つが実現した形となっている. その一方で,人工データの生成方法に関して再検討の必要性が生じたこと,計算に使用していたパソコンが故障(ハードディスクの中身が消失)したこと,27年度に利用が適さないことが判明した類型論的立場から作成されたパーソナリティテストとは異なるテストを入手したものの,予算の都合上調査に使用する項目を削減する必要が生じたためにその項目選定の準備に時間がかかってしまったことがあり,その部分に関しては計画が遅れているといえる.
|
今後の研究の推進方策 |
まず,従来から用いられている手法が十分に実用的であるかについて,人工データ生成の方法を見直した上で改めてコンピュータ・シミュレーションを用いた検討をおこなう.その上で,特性論的立場および類型論的立場のそれぞれに基づいて作成されたパーソナリティテストを同時実施し,従来の方法および質的潜在変数を導入した方法のどちらがより好ましいかについての比較をおこない,次いで,そこで見いだされた類型水準に該当する高次因子のようなまとまりの異同について検討し総括をすることを想定している.前年度の予算の都合上調査項目を削減する件については,削減をしない方向で検討中である.
|
次年度使用額が生じた理由 |
市販のパーソナリティテストを委託調査の形で実施しようとしたが,項目数が多いために予算の残額が不足すると見込まれた.そこで項目数の削減も検討したが最終的に調査の実施を断念し,29年度に実施をおこなうことにしたため.
|
次年度使用額の使用計画 |
本研究の最終年度であり調査の実施は必須である.このため主な使途は調査費用となり,12月中の実施を想定している.仮に予算面での問題が再度生じた場合には,やむを得ず使用項目数を削減するか,委託調査ではない形式を検討する.
|