研究実績の概要 |
近年の大災害発生や新たな感染症の流行から、リスクコミュニケーションに注目が集まるようになった。リスクコミュニケーションは、「リスクのより適切なマネジメントのために、社会の各層が対話・共考・恊働を通じて、多様な情報及び見方の共有を図る活動」(安全・安心科学技術及び社会連携委員会, 2014)と定義されている。リスクや危機的状態の防止として、社会や組織レベルのマネジメントは、環境や制度の整備に焦点をあてている。一方、個人レベルのマネジメントに対しては、できごとへの個人の“備え”を強調しているが、この“備え”にあたる心理変数が明確ではない。 災害など非常事態への準備や疾病予防行動に関連する心理的要因として、特に、危機・リスク認知が強く関連すると想定されている。同時に、2000年以降の感情知能の研究の進展に伴い、リスク認知に応じた適応行動の選択に、感情マネジメントなど感情コンピテンシーやリテラシーの要因が深くかかわることが指摘されるようになり、エビデンスの蓄積が求められている(Mayer & Salovey,1997;Saarni,1999 )。 本研究は、このような観点から以下の2つを目的とした:(1)危機・リスク認知と感情マネジメントの関連性の解明、(2)発達に即した感情マネジメントを各フェーズにとりこんだ危機予防教育プログラムの開発。 2017年度までに、海外における危機予防教育プログラムのレビュー、リスク認知や予防行動及ぼす感情の役割の検証、学校教育における感情教育の調査を行なってきた。2018年度は、これらの研究をまとめ、感情教育や危機予防に関する書籍やテキストとしてまとめ、学会発表を行なった。
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