研究課題/領域番号 |
15K13133
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研究機関 | 首都大学東京 |
研究代表者 |
須田 治 首都大学東京, 人文科学研究科, 客員教授 (50132098)
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研究分担者 |
下川 昭夫 首都大学東京, 人文科学研究科, 教授 (90330729)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | アスペルガー障害 / 発達支援 / 情動調整の発達 / 感情発達 / 親へのガイダンス / 親へのカウンセリング / 喚起調整 / 縦断研究 |
研究実績の概要 |
須田(2017)は『感情への自然主義的アプローチ:自閉症スペクトラムへの発達支援』で,障害についての仮説をまとめている。アスペルガー障害の情動的なメカニズムとしては,3つの情動的な機能不全をとらえることであった。すなわち(1)身体的な喚起のきわだった高まり(または低下)の問題が仮説としてとらえられた。筆者のデータによる検証では,高喚起のケースが,20か月間(26回の支援セッション)追跡的な支援により,パニックや攻撃性が軽減したということが明らかにされた。その経過は,執筆中の須田編著(2018)『生態としての情動調整:心身理論と発達支援』(金子書房)においてまとめている(印刷中)。さらに仮説の一部は(2)対人的なやりとりでの情動的表出を特徴づける表出パターン,関係的なチューニングの弱さとしてとらえられた。これは前年度に一部発表したが,さらに2018年度にまとめることにする。第3の仮説としては,(3)アレキシサイミアと呼ばれる感情的体験の弱さ,主観的な体験の偏りやその言語表現の弱さという問題も,今後にとりあげられることになる。いずれの問題においても具体的な発達支援の一部として,親への養育力の支援をも組み入れることが有効であると考えられる。たとえばアスペルガー障害の幼児には,感覚的過敏が喚起の上昇と相互的に活性化する。それと連鎖して主張性の激化,パニック,攻撃化などが起こる。そうした喚起上昇を低減させるために,母親へのガイダンスとカウンセリングが,帰宅後の変化を支えるものとして重要であると認められた。それは日常の家庭に繋がる,リアルな発達支援が必要なことを意味している。同じ狙いをもって,青年の当事者への緊張緩和支援するときにも,ガイダンスとカウンセリングを取り入れることが有効であると考えられた。
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