研究実績の概要 |
本研究の第一の目的は、乳児院における、乳児のアタッチメント形成について、縦断的な観察を行い、その特徴を検討することである。定型発達との異同を明らかにし、特に、心理職が、乳児の発達経過に即した里親や職員に対する適切なコンサルテーションを行うための基礎的なデータを収集していく。乳児院の養育環境のさらなる改善に役立つような成果を得ていくことが目指される。 研究初年度となる平成27年度の実績は以下の通りである。
①観察指標の検討:アタッチメントの形成までの過程をとらえるため、Spitz, R.やAinsworth, M.、Bowlby, J.を中心とした代表的なアタッチメントの理論書から、観察された乳児のアタッチメント行動の指標を連携研究者と共に、検討した。②観察シートの作成:これをもとに、研究協力者である施設の職員が、対象児の観察記録を作成するための項目を選出し、独自の観察シートを作成した。③乳児院での観察および研究の打ち合わせ:北海道、神奈川県、福岡県の各3施設へ、通算15回の訪問を行った。乳児院関係者からの養育環境に関するヒアリングと、対象児の養育場面の観察を行い、実際の撮影場面や方法について、詳しい確認を行った。④観察データの収集:各月毎に、対象児を中心とする養育場面の観察を収集した。観察場面は、授乳、遊び、抱っこなど複数から成り、観察資料として使用可能な場面を精査した。⑤愛着研究全般について、臨床的な研究の文献を収集して、臨床的な研究課題を整理した。⑥施設心理職を対象とした研修会:北海道と神奈川県の2つの研究協力院で、施設心理職を対象に、乳幼児のアタッチメント形成をより良くするための研修会を実施した。
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