研究実績の概要 |
本研究では,うつ病等の改善効果が実証されている非薬物療法のひとつである認知行動療法について,わが国の精神科診療所における実施状況および実施の阻害要因を明らかにすることを目的とする調査をおこなった。 厚生労働省(地方厚生局)が公表している医療機関の公的情報(オープンデータ)を用いて日本全国の医療機関リストを作成し,「診療科目に精神科,心療内科,およびそれに準ずるもの(例:児童精神科)を含むもの」かつ「病床数が20未満であるもの」を精神医療診療所と定義して,それらを対象とした郵送調査をおこなった。調査時期は,平成28年9月1日~平成29年2月28日であった。全6,265件のうち1,019件から回答データを得た(回答率:16.5%)。 調査の結果,認知行動療法(診療報酬を用いて実施しているか否かは問わない)を導入していると回答した診療所は386件であり,全精神医療診療所6,265件を分母とした際の認知行動療法導入率は6.2%,全回答者1,019件を分母とした際の認知行動療法導入率は37.9%であった。認知行動療法導入率を都道府県別に算出すると,全診療所を分母とした場合は0.0%~13.7%,全回答者を分母とした場合は0.0%~80.0%と,いずれも一定の地域格差が見られた。 回答者から報告された主な実施阻害要因は「認知行動療法を実施する時間がない」「採算が合わない」「認知行動療法を実施できるスタッフがいない」等であった。
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