研究課題/領域番号 |
15K13142
|
研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
田中 康裕 京都大学, 教育学研究科(研究院), 准教授 (40338596)
|
研究分担者 |
河合 俊雄 京都大学, 学内共同利用施設等, 教授 (30234008)
畑中 千紘 京都大学, 学内共同利用施設等, 助教 (30532246)
梅村 高太郎 京都大学, 学内共同利用施設等, 研究員 (10583346)
|
研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
|
キーワード | 夢分析 / 心理療法 |
研究実績の概要 |
夢の構造分析という研究テーマに着手すべく、平成27年度は、海外研究協力者のChristian Roeslerの手法を含めて、夢のなかの自己関係に焦点を当てる分析方法について、共同研究者らとともにmeetingを重ねた。 素材としたのは、「箱庭療法学研究」に掲載されている夢を取り扱った事例研究論文や『ギーゲリッヒ夢セミナー』所収の夢を中心とした事例報告であった。Roeslerの「夢の構造分析」だけでなく、ネットワーク理論を参照したり、夢に立ち現れる自己関係の変化に焦点を当てたりする等、様々なアプローチが試みられ、これについては引き続き、検討してゆく予定である。 他方、大学生約300名を対象とした「最近みた夢で最も印象に残っている夢」「子どもの頃みた夢で最も印象に残っている夢」について調査を、夢見頻度等の夢見に関する質問紙、「自己感尺度」「対人恐怖心性尺度」の質問紙と併せて施行した。「自己感尺度」では、その高群と低群で夢の特徴に違いが見られ、低群では、夢のなかの要素が多く複雑な構成だったり、刺激が不明瞭で曖昧になると、夢見手が主観的に物語をまとめ上げられず、羅列的な語り、反応失敗,拒否に近い語りになったりする等、 構造の段階から見てとれる不全感のようなものが見られ、象徴レベルの解釈にまで踏み込みづらいという結果が得られた。このような調査結果については、日本箱庭療法学会第30回大会で発表する予定である。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
夢における自己関係に焦点を当てる際の分析手法がまだ定まっていないことが挙げられる。Roeslerの「夢の構造分析」は、自我優位な西洋人の夢にはフィットするが、日本人の夢に対する妥当性についてはいまだ検証する必要がある。ただし、このような検証それ自体が、比較文化的研究の一部ともなっており、この点についてはさらなる検証を重ねてゆきたい。
|
今後の研究の推進方策 |
夢のなかの自己関係に焦点を当てる分析方法について。比較文化的観点ももちながら、検証を重ね、その過程のなかで、「箱庭療法学研究」以外の学術雑誌に掲載されている夢が扱われた事例の分析、スイス・ドイツの夢の報告を含む臨床事例の分析も進める。 併せて、国内での中高生に対する調査も実施し、発達的観点からも、夢のなかの自己関係について検証する。夢の構造の分析手法の確定を待って、スイス・ドイツでの調査も実施する。 並行して国際シンポジウムも企画し、研究成果については順次、国内外の学会で発表する。
|
次年度使用額が生じた理由 |
「夢の構造」を分析する手法について検証を進めている途上で会ったため、当初予定されていた「夢の構造分析」の考案者であるChristian Roeslerを招いての国際シンポジウムを開催しなかった。
|
次年度使用額の使用計画 |
平成27年度の開催予定であった国際シンポジウムを平成28年度に開催する予定である。
|