研究課題/領域番号 |
15K13143
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研究機関 | 和歌山大学 |
研究代表者 |
入野 俊夫 和歌山大学, システム工学部, 教授 (20346331)
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研究分担者 |
花田 里欧子 東京女子大学, 現代教養学部, 准教授 (10418585)
古山 宣洋 早稲田大学, 人間科学学術院, 教授 (20333544)
井上 雅史 山形大学, 理工学研究科, 助教 (50390597)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 心理面接過程 / 客観エビデンス / 内観時系列評価 / 臨床評価 / 音声分析 / 頭部運動分析 / データマイニング |
研究実績の概要 |
目標達成のため以下3項目の研究を推進した。 (1) データ収集、整備とデータベース化: 京都教育大学で収録した44件の臨床心理面接データに関して、発話内容のテキストとマイクロカウンセリング手法による発話の特徴ラベル付与を継続して行った。新規作業者に交代して、手探り的な所もあったため、見込みより少なくなったが、15件分完了した。また、アノテーション手法共有化のためのマニュアルを整備し、今後加速化が期待できるようになった。 (2) 面接効果の時系列連続評価: 臨床心理の大学院生3名に、面接におけるセラピストの「傾聴」(相手の話を聴いている/いない)の度合いを、感情推移観測システム(EMObar)を使ってビデオを見ながら実時間入力させた。 このうち1人は44件の評価を完了し、2度目の評価も残り僅かとなり安定性の検討ができるようになった。EMO評価値の評価者間の相関は低く、「傾聴」という概念自体の把握のしかたや評価値の与えかたが人により異なることが明確化できた。また、傾聴評価値を時間関数としてプロットし、その上昇部分および下降部分をラベル付けした。その上でラベル付与時点のビデオを再度見ながら、その評価値の変化を与えた理由を注釈として書き出してもらった。さらに、マイクロカウンセリングのラベルやアノテーションとの対応関係に関して検討を加えた。これらの成果は、研究会で2回発表し、新しいアプローチとして聴衆からも多くの質問や提案を受けることができた。 (3) 計測・評価系の高度化: 今年度は新規開発を行わず、当初の設計図面どおりにEMObarセットと加速度センサ系を数個製作した。これらは当該研究と別の対話評価課題や運動計測でも使用し、十分に活用できることを確認した。本研究推進に必要十分な完成度の計測・評価系を構築できたものと考える。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
進捗に関して、概要内項目の(1)、(2)はおおむね計画どおり、(3)は完了と自己評価する。 (1) データ収集、整備とデータベース化: アノテーション付与の作業者を、専門知識を持つ臨床心理士/学生としたが、判断基準の安定化や慣れの問題もあった。また、時間的にも長くなるため、作業者数をそれほど増やせず、結果的に当初見込みより作業スピードが遅かった。しかしながら、作業の経験に基づいた実践的なマニュアルを整備し、今後の加速化に資することができた。 (2) 面接効果の時系列連続評価: 面接の進行に合わせて、「傾聴度合」を時系列の連続量として、臨床心理士が入力を行うことは順調に進んだ。概要のとおり、44データの2度評価を間も無く完成させることができるようになったのは大きな成果である。この一部のデータを用いて、マイクロカウンセリングラベルや発話内容との対比等、従来研究では行えなかった新しい方法論を提案し、研究会においても発表した。データから何を抽出できるかの検討に関しては、様々な方面からアプローチを試みる段階となった。計画どおりである。 (3) 計測・評価系の高度化: センサ系や収録系は、本研究の目的を達成できる完成度の計測・評価系を構築できたものと考える。この項目は完了である。
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今後の研究の推進方策 |
H29年度は以下のように進める。 (1) マニュアルも整備され、定期的に入力作業を依頼できる状況になったため、アノテーション作業を着実に進める。このための作業者も増やす予定である。可能であれば44データすべて完了し、データベース化したいと考えている。 (2) 上記のマイクロカウンセリングラベルと発話内容のアノテーションが終了したデータから順に、上記の「傾聴度合」の時系列連続評価を行っていき、その特性や規則性を探る。難しいのは自明であるが、だからこそ研究をする意義がある。 (3) 完了したため、計画としては無し。ただし、(1)(2)を進めるうえで必要が生じた場合、新規開発/改良を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
進捗状況に記述したとおり、アノテーション作業に関して、作業者数を増加させることができなかったため、謝金が見込みより少なくなった。
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次年度使用額の使用計画 |
作業に参加できる臨床心理士/学生をさらに増やすことも検討し、アノテーション作業の進みを速めるための謝金に使用する。
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