近年の「発達障がい」への関心の高まりから、従来の臨床心理学の分野に留まらず、様々な関連分野で発達検査・知能検査が活用されている現状がある。しかしながら筆者らの先行研究においては、①結果報告に対する保護者の満足度が高くないこと、②報告内容に関して、保護者と報告者側の間には重要視する点に差異が認められることを見出したため、「保護者ニーズを踏まえた結果の伝え方」について検討した。児童デイサービスまたは放課後児童デイサービスを利用している子どもの保護者23名を対象として再度の予備調査を実施した。その後、質問項目についての検討を行い、児童デイサービスまたは放課後児童デイサービスを利用している子どもの保護者100名に対して本調査を行った。また並行して、報告者の立場にある専門家11名に対し、結果説明において重要視している点等について、面接による調査を実施した。再予備調査の結果では、個人間差や個人内差と密接に関係してくる数値についても十分な説明とともに伝えていくことや日常用語と専門用語を併記していくことの必要性などについて再確認した。また専門家への調査では、①結果だけではなく、その後の支援方法についても伝える②情報共有者と範囲を確認する③対話を重視する、などの共通点が見られたと同時に、伝える側と受け取る側のズレを最小限に留めるための工夫を行っている専門家もいた。今後さらなる調査を実施した上で調査結果を十分に分析し、専門家への調査結果と統合した上で臨床実践、「発達障がい児の保護者ニーズを踏まえた結果の伝え方」に関するガイドラインの最終版を作成する予定である。ガイドラインは学会等で発表するとともに、書籍として出版したいと考えている。なお本研究の一部は、日本LD学会でポスター発表を行った他、徳島K-ABCアセスメント研究会にて報告した。
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