研究実績の概要 |
認知症患者が適切な治療を受けるためには早期診断が重要であるが、認知症は本人の病識が欠如するために自発的な受診は難しいのが現状である。今年度は、地域に在住する高齢者が認知症という病気への告知に対してどのような意識を持っているのかについて明らかにし、さらに認知症に対する不安に影響を与える要因について検討した。対象者は地域に在住する高齢者523名(男性163名:女性360名、76.5±6.3:65-95)とした。調査内容は、認知機能検査と生活に関する質問紙調査であった。①認知機能検査:高齢者用集団版認知機能検査ファイブ・コグを用い、記憶・学習・注意・言語・視空間認知・思考の領域を測定した。②質問紙調査:認知症告知については、「あなた自身が将来認知症になることについてどの程度不安に感じていますか」「もしあなたが認知症になったら、医者や家族からその事実を知らせて欲しいですか」と尋ねた。この他に、うつスケール(矢富,1994:GDS-15)、孤独感尺度短縮版(豊島・佐藤,2013)、老研式日常活動指標(古谷野・柴田ら,1987)なども測定した。この結果、認知症に対する不安と認知症への告知との間に関連は認められなかったが、認知症への不安を感じ(82.6%)、告知を希望する人(83.0%)が多かった。認知症への不安に関連する要因について、順序ロジスティツク回帰分析を用いて検討した結果、年齢と性別、うつ傾向において有意な関連が認められた。これらのことより、高齢になるにつれ、女性に比べ男性の方が不安を感じにくく、不安傾向が高い人は不安を感じやすいことが認められた。
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