研究課題/領域番号 |
15K13150
|
研究機関 | 東海学園大学 |
研究代表者 |
音谷 理子 (三宅理子) 東海学園大学, 人文学部, 教授 (20319833)
|
研究分担者 |
高橋 晋也 東海学園大学, 人文学部, 教授 (70260586)
|
研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
|
キーワード | アセスメント / 絵画療法 / 水景画 / 色彩臨床心理学 / 臨床心理学 / 色彩心理学 |
研究実績の概要 |
本研究は、「水のある風景を自由に描く」という課題画(以下、水景画と呼ぶ)を色彩学的に分析することにより、描画者の性格や精神状態を推定する新たな心理アセスメント手法を開発することを目指すとともに、描画行為そのものによる治療効果の可能性を追求するものである。 平成28年度は、平成26年度までに蓄積してきたデータの中から、大学生のデータを取り上げ、男女別に、水景画の色彩情報と性格傾向との関連について分析し、その結果をAIC (Association Internationale de la Couleur) 2016 (於カトリカ大学、チリ)にて発表を行った。 さらに、平成27年度に取得した中学生データについて、水景画の色彩情報・形態情報と描画者のパーソナリティ特性との関係を分析し、その結果を日本色彩学会第47回全国大会(於いて名城大学)で発表した。水を青で濃く塗る者は、YG性格検査の12尺度のうちCo(非協調性)が低く、G(一般的活動性)とT(思考的外向)が高い傾向が見出された。これは、同様の描画特徴をもつ大学生でAg(愛想の悪いこと;攻撃的)とR(のんきさ)が高いという結果と一致しないが、G高得点者の長所として活動的、T高得点者の長所として果断が挙げられ、これらの性質はAg高得点者の積極的や意欲的、R高得点者の行動的や決断力とも共通性が見られるため、「課題に意欲的に取り組み、水の彩色として自分で決めた色(青)で塗り残しなく塗りきるよう強く動機づけられた」という大学生の背景心理と大きく矛盾しないと考えた。 さらに、Co低得点者の長所として挙げられる現状肯定的という性質は、「水は青で塗る」という幼少期からの描画習慣を受容したままであると考えることもできる。中学生におけるCoの低さ(協調性の高さ)の一面として、そのような葛藤体験前の素直な性質があるのかもしれないと考察した。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
初年度は、平成26年度までに蓄積してきたデータの中から、大学生のデータを取り上げ、水景画の色彩情報と性格傾向との関連について分析し、日本色彩学会第46回全国大会にて発表を行った。さらに、初年度には、新たに大学生130名と中学生48名に対し、描画調査を実施した。 2年目の平成28年度には、その中学生データについて、水景画の色彩情報と性格傾向との関連について分析し、日本色彩学会第47回全国大会にて発表を行った。さらに、新たに大学生66名と高校生100名に対し、描画調査を実施した。 このように、描画調査、分析、成果発表ともにおおむね順調に進めることができている。
|
今後の研究の推進方策 |
最終年度の平成29年度には、今まで実施してきた描画調査のデータを整理し、描画者が水に対してもつイメージと、水景画の色彩情報・形態情報との関連について分析を行う。中学生の分析結果については日本色彩学会第48回全国大会(2017年6月開催)にて、大学生の分析結果については、AIC (Association Internationale de la Couleur) 2017(2017年10月開催)にて発表する予定である。 さらに、描画行為そのものによる治療効果の可能性を追求するために、大学生を対象に個別に描画調査を行う予定である。水景描画を課題とし、その前後で同じ質問紙を二度取得し描画による気分や感情の変化から、描画行為の効果を測定する。
|
次年度使用額が生じた理由 |
水景画の色彩情報・形態情報の測定のために、アルバイトを雇う予定にしており、人件費・謝金を計上していたが、候補者をうまく見つけることができず、謝金を予定通りに執行することができなかった。
|
次年度使用額の使用計画 |
最終年度の平成29年度については、今までの描画調査のデータ整理を行う必要もあるため、学内外に広く募集をかけ、アルバイトを雇う予定にしている。
|