研究課題/領域番号 |
15K13151
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研究機関 | 奈良女子大学 |
研究代表者 |
加藤 奈奈子 奈良女子大学, 生活環境科学系, 助教 (40583117)
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研究分担者 |
桑原 知子 京都大学, 教育学研究科, 教授 (20205272)
鳴岩 伸生 京都光華女子大学, 健康科学部, 准教授 (20388218)
川部 哲也 大阪府立大学, 公私立大学の部局等, 准教授 (70437177)
佐々木 玲仁 九州大学, 人間環境学研究院, 准教授 (70411121)
佐々木 麻子 立命館大学, その他部局等, 職員 (80649517)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 長期閉鎖環境 / 内田クレぺリン精神検査 / 自覚症状 |
研究実績の概要 |
平成28年度は、課題の中期にあたり当初の予定では、研究の一部成果を発表することを計画していた。昨年度の課題内容の変更を受けて、これまでの研究成果の中から課題に関連して再分析し、(1)国際学会での発表を行った。さらに、(2)内田クレぺリン精神検査の分析に関する準備および(3)日常的に使用できるストレスを可視化するための機器の選定などを行った。 (1)国際学会での発表として、国際心理学会(31st International Congress of Psychology)での3本の発表、SCAR(SCAR Open Science Conference)での2本の発表を行った。このうち国際心理学会での研究代表者の発表(Kato, N. (2016). "Experiences in Antarctic Station" as "Extraordinary".)では、身体的症状とストレスの自由記述との関連分析を行い、ストレスを自覚的に表現できる人とできない人の差異を身体症状の有無から探索する研究を行った。 (2)越冬中の医療隊員の医学調査の分析担当という位置づけで内田クレぺリン精神検査の分析を行う予定であるが、実施に際し、越冬中の医療隊員とやりとりし、施行の際の助言をし、どのようにして均質な結果を得るための方策について話し合った。また、内田クレぺリン精神検査の分析に関連して、分析においてどの点に注目するかを明らかにした。 (3)日常的に使用する可視化するための機器の選定を行った。簡便性や対象者へのフィードバックできる項目の多さや侵襲性の少なさに着目しながら、研究分担者で実際に装着し、確かめることによって可視化するためのツールとして適切であるかの判断を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
今年度は、国際学会での発表を複数行い、研究成果を発信するという計画から考えると、国際学会での5本の発表に関しては、大いに進展があった年度であったと捉えている。特に、ストレスに対して表現できる人とできない人の違いを身体症状の有無から探るという研究の分析においては、ストレスに対する個々人の受け止め方を研究することができたという意味ではある一定の結果が得られたと考えられる。 しかしながら、昨年度、生理的指標としての機器を用いて実際に南極で調査を行うという予定から、医療隊員が医学調査で行う内田クレぺリン精神検査の分析に変更を行ったことで、当初予定していた日常的にストレスを可視化し、それを南極で実証的に調査するという計画から考えると当初予定していた中間発表には至っておらず、全体的には「やや遅れている」という判断を下した。 このような判断ではあるものの、来年度においては、南極越冬隊員の帰国に伴い、課題の主軸となる内田クレぺリン精神検査の全体の結果が揃ってくること、その分析によって生理的指標との差異を考えることができるだけなく、内田クレぺリン精神検査の検査自体に対しての考察が得られるであろうことを推測しており、総合的に来年度は、当初の研究計画を上回る結果の進展が期待できると思われる。
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今後の研究の推進方策 |
今後の研究では主に2つの課題を並行して遂行する予定である。 (1)内田クレぺリン精神検査と気分変動に関しての結果の分析 越冬医師の医学研究の分析を担当しており、検査の分析とその結果と気分変動の結果との関連を分析する予定である。また、分析結果は7月に開催される南極医学医療ワークショップにて発表し、12月に調査対象者にフィードバックを予定している。 (2)日常的なストレスの可視化についての予備調査の実施 現在、日常的なストレスを測る機器として、心拍数がモニタリングできる機器の導入を検討している。長期閉鎖環境という環境下で行う前に、日本で予備調査を行い、寒冷環境でも使用が可能かどうかといった点や、機器の耐久性などに関する調査と同時に、随時モニタリングし、可視化していることがどのような心身のストレスに関連するかといった点を調査する予定である。これにより、長期閉鎖環境下という日常生活よりもストレスがあるだろう環境について施行する前に調査の有用性について吟味するだけでなく、長期閉鎖環境下での調査も可能であるならば、日本での施行と南極での施行を比較検討することが可能であり、研究も大いに進展するのではないかと考えている。 さらに、来年度は最終年度にあたり、本課題をまとめる時期にあたる。特に研究の成果を内外に発信するという意味で国際学会での発表の成果を論文化する作業も行うことに努めたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
計画時点で予定して、生理的指標機器を内田クレぺリン精神検査に変更し、またその検査結果の分析は、越冬隊員の帰国に合わせ次年度に行うこととなった。そのため、次年度で分析を行うための人件費、およびフィードバック面接や越冬医師との打ち合わせのための招聘における旅費などで使用することとなった。 また、今年度予定していたマレーシアでのSCARでの発表を、横浜での国際発表に変更して行うことになったため、渡航費も含め、当初より旅費は少なく支出された。 さらに、より簡便で日常的に使用できる携帯機器について模索しているが、決定するまでには精査が必要であり、予備調査の実施には至らなかったため、支出が少なくなったといえる。次年度では日本国内での予備調査実施を予定しており、それに合わせて機器の購入を予定している。
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次年度使用額の使用計画 |
次年度は主に、(1)内田クレぺリン精神検査の分析とそれに伴う旅費、人件費、(2)予備調査実施に伴う消耗品購入に使用する予定である。 (1)内田クレぺリン精神検査について、大学院生のアルバイトを雇い分析の手伝いをしてもらう予定である。データ数は、200程度あり、分析手順の準備を含め分析を行う人件費が発生する。また旅費としては、協力していただいている越冬医師との打ち合わせにかかる旅費、さらに医学医療ワークショップでの発表にかかる旅費のほか、研究成果をフィードバックするおりの調査協力者の旅費や会場費として支出する。 (2)予備調査を国内で実施するにあたり、携帯型の端末(1つあたり約2万円)を購入する予定である。予備調査の人数は研究の課題によって決定するが、10名程度を予定しており人数分の機器を購入予定である。
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