本課題では、対面場面における自己注目、他者注目の継時的変化の測定可能な指標について検討し、可能であれば社交不安者の不安喚起に自己/他者注目が及ぼす影響について検討することを目的とした。そのために、平成27年度、28年度にわたり、自己/他者参照課題中のNIRSデータをサポートベクターマシン(SVM)によって解析することで、自己注目状態と他者注目状態を識別可能か検証してきた。平成29年度は、同手法によって実際の対面場面中の自己/他者注目状態を継時的に判別可能か検証し、さらに身体的不安反応(平均RR間隔、SCR)との関連性を検討することを目的とした。 20名の女子大学生に対し、モニタに呈示された単語が自分自身にどのように当てはまるか考える自己参照課題、他者について考える他者参照課題をそれぞれ8試行ずつ実施した。また、各試行の間に、自己、他者いずれにも注目していない状態を測定するために、画像刺激中の指定された対象物の数を数える課題を実施した。続いて、モニタ越しに見知らぬ他者と交互に自己紹介をするよう求め、他者による自己紹介、参加者の自己紹介の順で2回の自己紹介を実施した。実験中NIRS、EOG、SCRを連続測定した。 自己/他者参照課題中のNIRSデータにSVMを実施して自己/他者注目状態、およびその他の状態の識別を試みたが、これまでの研究と異なり、2名のみで自己注目/他者注目/その他の状態を比較的高い識別率(50~80%:チャンスレベルは33%)で識別できた。そのうち、1名のデータに対してのみ対面場面中の注目状態をSVMによって解析することができた。SVM、身体的不安反応の結果から、自己/他者注目が時間的に頻繁に切り替えられており、特に自己注目後に平均RR間隔の減少、およびSCRの増大が認められる傾向が確認された。
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