研究課題/領域番号 |
15K13163
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研究機関 | 生理学研究所 |
研究代表者 |
木田 哲夫 生理学研究所, システム脳科学研究領域, 特任准教授 (80419861)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 脳領域間結合 / 脳磁図 / 注意 |
研究実績の概要 |
知覚および認知の成立には脳活動だけでなく様々な神経回路間での信号の相互伝達が必要である。近年、様々な認知課題遂行中の脳領域間の機能結合・有効結合が明らかにされてきたが、結合解析法は多数提唱されており、統一的な見解は得られていない。特に脳波や脳磁図では容積伝導の影響や基準電極の問題があり、どの結合解析法を選択すべきかは重要な問題である。本研究では、注意課題を遂行している際の被験者から脳磁場データを計測し、脳領域間結合の解析結果を様々なタイプの結合解析法について網羅的に比較する。これによって各解析法の長所・短所およびそれらの有用性を明確化することを目的とする。初年度は方向性を持たない機能結合の指標に着目した研究を行ったが、本年度は、方向性を持つ有効結合の指標に着目した研究を行った。様々な視覚的特徴を有する視覚刺激を被験者に提示した。これらの視覚刺激の識別を必要とする視覚性注意課題を被験者が遂行している際に全頭型306チャンネル脳磁場計測装置で計測した脳磁場(Magnetoencephalography: MEG)データに対して、有効結合の指標として位相勾配および移動エントロピーを求め、比較した。またMEG信号の各周波数帯域の活動量(パワー値)も検証した。これらの解析は全て信号源空間で行なった。その結果、位相勾配と移動エントロピーは類似のパターンを示したが、パワー値とは異なるパターンを示した。これらの結果は、機能結合と有効結合を含む脳領域間結合の指標を選択・利用する際の手がかりのひとつになるものと考えられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
計画通り、有効結合の比較をおこなったが、前年度に用いた解析法に弱点があることが判明した。これを克服できる方法論を新たに導入するため、研究課題を翌年度まで期間延長することとした。そのため、やや遅れていると評価した。
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今後の研究の推進方策 |
パワー相関法による結合解析を用いた追加実験および解析を次年度に行う。またサンプル数を増やす。
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次年度使用額が生じた理由 |
初年度にバイアス除去位相差法による結合解析を行ったが、この方法ではパワー値の増減に伴うバイアスを完全には排除できないことがわかった。そのため、追加実験および追加解析を次年度に行い、より詳細な検討を加える必要性が生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
追加実験およびパワー相関法による結合解析を用いた追加解析を次年度に行うこととし、未使用額はその経費に充てる。
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