研究課題/領域番号 |
15K13165
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研究機関 | 関西学院大学 |
研究代表者 |
片平 建史 関西学院大学, 理工学部, 講師 (40642129)
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研究分担者 |
川上 愛 関西学院大学, 理工学部, 受託研究員 (70722007)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 鳥肌 / 情動 / 顕著性ネットワーク |
研究実績の概要 |
当該年度の研究としては、昨年度に引き続いて情動的鳥肌の生起に関わる質問紙調査を実施した。 この質問紙調査は本研究が目標とする、実験室環境での情動的鳥肌の検討のための個人と刺激のスクリーニングのために取り組まれたものであった。しかし、昨年度の予備的な調査の結果、この質問紙調査の内容が情動的鳥肌の知見に対して大いに寄与する可能性が示唆されたため、一つの研究テーマとして独立させて調査対象を拡大して実施した。 質問紙調査の内容は、情動的鳥肌を体験する情動の種類(楽しさ、怒り、驚き、悲しみ、興味、恐怖、幸福、感嘆、嫌悪、恐怖の10種類)に注目し、どのような情動で鳥肌を体験するか、具体的にどのような状況で情動的鳥肌が喚起されたことがあるか、さらにその状況が持つ情動的な性質はどのようなものであるか、などについて回答を求めるものであった。 本年度は調査対象を学生から一般成人まで拡大するとともに、対象人数の充実を目指し、最終的に236名分のデータを取得した。また、情動的鳥肌の体験だけではなく、Big Five理論に基づいた性格特性の測定を実施し、情動的鳥肌の体験頻度に関連する個人特性の検討も実施した。 結果より、情動的鳥肌が「恐怖」「驚き」「感嘆」で特に頻繁に生じていること、情動的鳥肌の生起を説明する主要な要因として「ポジティブ」「ネガティブ」「驚き」の感情的性質が影響していることが明らかとなった。また、性格特性はこれらの感情要因に対して個別に関連しており、ポジティブな情動での鳥肌は経験への開放性、ネガティブな情動での鳥肌は神経症傾向の高い個人でより体験されやすいことが示された。これらの知見はchills研究で得られてきた知見を一般的な感情理論に体系づけることに寄与しうるものであり、国際会議での発表を行うとともに、学術雑誌への投稿準備を進めている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
昨年度に実施した情動的鳥肌に関する予備的な調査研究において、情動的鳥肌の現象面の理解について大きな進展が得られた。そこで、研究計画を修正して調査研究の比重を拡張し、成果の発表を行った。 調査研究の成果はそれ自体が学術的な価値を持つとともに、将来の実験室実験を計画する上で重要な情報を提供する。当初予定していた実験室実験は次年度の実施となり、規模の縮小も予想されるが、それに代わる成果と当初の研究目的に向けた知見の蓄積は着々と進んでいる。 以上を総合して当該年度における研究の進捗状況を判断すると、当初の研究計画のうち研究手法に関して変更があるものの十分な成果が得られており、おおむね順調に進展していると言える。
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今後の研究の推進方策 |
質問紙調査の結果から、鳥肌を体験する情動的要因が特定されるとともに、どのような情動で鳥肌を体験するかについての個人差がBig Five性格特性などの個人特性によって生じていることが明らかになった。 今後の研究として、これらの知見の精緻化と普遍性の確認のために、情動的鳥肌の喚起状況/刺激の調査と通文化研究を実施する。また、実験的研究の手法を先行して開発するために、生理指標計測あるいは脳機能計測による検討を鳥肌の客観的計測とあわせて実施する。この取り組みはケーススタディとして質問紙調査で特定された特に鳥肌を生じやすい個人に協力を依頼して実施する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初計画では、fMRI計測時の鳥肌の客観的計測に用いるMRコンパチブルカメラを当該年度に導入する予定であった。しかし、基礎的な調査を目的とした質問紙調査による研究から成果が得られつつあることから計画を修正し、これまで得られた成果の精緻化のために追加的な調査研究に主眼を起き、当該機器の導入は見送ってより安価な機材を用いた客観的計測機器の開発に切り替えることとしたため。
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次年度使用額の使用計画 |
理由に述べたように、次年度使用額は当該機材を置き換えるより安価な機材を購入する際の費用に一部を充当する予定である。また、新たな研究課題として位置づけられる追加的な調査研究を実施するための費用としても使用する予定である。
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