当該年度の研究としては、昨年度に引き続き情動的鳥肌の生起に関わる質問紙調査を実施するとともに、情動的鳥肌の実験的環境での計測を行った。 昨年度の質問紙調査は、当初計画における実験室環境での情動的鳥肌の検討にあたり、個人と刺激のスクリーニングのために計画されたが、(1)情動的鳥肌が生起する感情の種類、(2)情動的鳥肌の生起に関連する性格特性について新規な知見を提供しうる研究テーマとして新たに設定したものであった。 本年度の質問紙調査の内容は、昨年度の質問紙調査の再現性を検証するとともに、情動的鳥肌を体験する情動について、対象を10種類から16種類に拡大して検討を行った。また、情動的鳥肌の体験頻度に関連する個人特性の検討を行うため、Big Five理論に基づいた性格特性の測定を実施した。当該調査の対象者は20代から60代の一般成人であり、合計150名分のデータを取得した。得られたデータにより、昨年度調査の結果のうち再現性が確認されたものについては、情動的鳥肌を感情横断的に検討した希少な知見として論文などの形で成果発表を進める予定である。 情動的鳥肌の実験的計測については、記録装置の改良によって鳥肌の客観的計測手法の精度向上を実現し、ケーススタディとして質問紙調査で特定された、特に鳥肌を生じやすい個人に協力を依頼して2名分の計測を行った。皮膚コンダクタンス、呼吸、脈波、体表温の生理計測を同時に実施し、情動的鳥肌と共起する交感神経活動を検討するための基礎データの取得に成功した。 期間全体で得られた研究成果としては、(1)従来の研究で見過ごされていた感情横断的な観点から、情動的鳥肌の生起、およびそれに関わる個人特性としての性格特性の影響についての体系的な知見を取得するとともに、(2)情動的鳥肌に関わる抹消の神経活動を検討するための、鳥肌の客観的計測に同期した生理活動データの取得に成功した。
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