発達障害やてんかんをもつ児童を対象とした脳機能計測は、多動・衝動性が強いといった特徴から、実施が困難である。特に、前頭葉に脳波異常を呈する場合、注意の持続が極めて困難であったり、多動性や衝動性を生じる場合が多い。脳機能の特異性を評価する場合、通常は認知活動中の脳機能を計測するが、上記の理由から認知課題を遂行することが困難である。一方、安静時脳活動が高次認知を関連しているという報告が最近なされてきている。そこで、認知課題困難次を想定した安静時の脳機能を計測するための手法の開発を試みた。その結果、安静時の脳波のオシレーション解析結果と認知機能との関連性が見出された。今後は、症例数を増加してより詳細に検討することが求められる。 また、関連した学会でのシンポジウムを開催し、論文発表を行うことで、発達障害に関わる脳機能計測の意義について、広く啓蒙活動を行った。シンポジウムでは、多施設共同研究における発達障害のとりくみを紹介し、今後の日本の小児のバイオマーカー研究の基盤となる活動を行った。論文では、注意欠陥・多動性障害(ADHD)児の意思決定について、認知機能の面との関連性を論じた。また、小児の脳機能の発達的変化について、特にADHD児の特異的な前頭葉の発達的変化について論文としてまとめ、投稿中である。今後も本研究内容を広く学会等で公表し、認知課題が特に困難な児のバイオマーカー測定の開発を行ってゆきたい。
|