本研究は、現代日本の教育政策を分析するためのアーカイブズ学の創築を目的としている。短期・即時的な研究成果の要求と、研究実施者が研究の着手から研究成果の公表まで一貫して行い、研究成果も全てがその研究実施者に帰属するという原則が貫かれている現在、そのアンチテーゼともなる。新たな研究領域と研究者の機能・役割を切り拓くことを意図した取組である。そのため、①現代の教育政策を解明する上で必要・十分な資料・データ・証言とは何かを検討し、②それに基づいて選択した政策に関する資料群を発掘・収集・保存する作業を行い、③保存した資料群を、後世の研究者に知のギフトとして受け継いでもらう、という課題を掲げている。 1年目は3学会を対象に教育政策資料の収集・保存・利用に関する意向調査と海外におけるアーカイブズの仕組みの訪問調査を実施し、2年目は海外におけるアーカイブズの仕組みの訪問調査の継続と、初中等教育政策のうち、道徳教育の教科化を取り上げ、公開資料である「教育再生実行会議」「道徳教育の充実に関する懇談会」「道徳教育専門部会」「道徳教育に係る評価等の在り方に関する専門会議」等の資料収集と議事録の整理を行った。その上で、公務員以外の各部会委員等への訪問調査を実施した。 3年目は、公務員に対する訪問調査の実施に着手した。公務員調査で課題となるのが、公務員の守秘義務との関係であり、これまでオーラルヒストリー等が実施されてきたが、その手続きについては必ずしも明確でなく、参照するものが少なかったため、弁護士等とも相談しながら、本調査における記録保存と公務員の守秘義務の関係についての覚書を作成し、その了解の元に訪問調査を実施した。2年目までの取組と同様、原則10年間は開示しない資料として保存し、その後も開示の扱いについては、調査協力者と相談の上決定していくこととし、収集した情報は厳重に保存することとした。
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