本研究は、米国巨大財団が米国の連邦政府や州政府の高等教育政策に与える影響を対象とした。米国ではゲイツ財団やルミナ財団などの民間財団が、社会問題の問題設定を行い、それに向けて自身が助成をするだけでなく、政府にも方向性を合わせるように働きかけ、最大の効果を得ようとしている。 一方、研究2年目にオバマ政権からトランプ政権へと変わり、トランプ政権は独自路線を突き進み、また民間財団に対して課税を強める動きも見せていたため、米国の民間財団は一斉になりを潜め、連邦政府と距離を置くようになった。これに伴い、これら財団が高等教育政策に及ぼす影響も測ることができなくなった。民間財団は公的財団と比べ、説明責任等透明性を担保する必要がないため、外部からの調査に対しても口が堅い。 本研究は一年間延長したが、トランプ政権の影響はますます強くなる一方であったため、実態をより深く把握するというかたちではなく、これまでに得られた成果をまとめる方向で研究を進めた。 米国の高等教育の現状を描写したセリンゴ著の「カレッジ(アン)バウンド」を翻訳出版し、関係者に配布した。これは大学授業料高騰に伴う学生の行動の変容や、その解決方法の一つとしてのデジタル教育などを取り上げており、米国財団が特に注力している施策ともなっている。また研究面のオープンアクセス(OA)やオープンサイエンスについても、ゲイツ財団はF1000 Researchなどのプラットフォームを構築し、助成した研究の即座OAを求めているが、これについても日本の研究不正の文脈に照らして、「Requirements Analysis of System for Research Data Management to Prevent Scientific Misconduct」という論文を発表した。その他、現在「変わりゆく高等教育(仮題)」の執筆に取りかかっている。
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