最終年度は前年度までの研究成果を踏まえて実証実験を行う年とし、研究成果を反映した反転授業の実施とその分析をおこなった。具体的には、大学の教養教育における、①教育学に関する授業および、②自然史の授業を対象とした。いずれも、中等教育までの教育では、前提知識を学ぶことはほとんどない(①に関しては教養教育の授業であり、教職科目の選択者、教育学部の学生等の受講はなかった)。 前年度までの研究により、その授業を受けるまでに得ているレディネスと反転授業における事前学習の関係が対面授業に与える影響が大きいと考えられるため、事前学習のデザインにおいて、前提知識がない場合でも学習者の理解が徹底できるような工夫を行った。①においては事前学習として、オンデマンドのeラーニングによる基礎的知識の講義受講とともに、掲示板を使った講師とのインタラクティブなやりとり、学習者相互のディスカッションを導入し、②においては同期型のeラーニングによる遠隔指導および、課題図書を使った読書指導を導入した。その結果、いずれの授業においても、事前活動において前提知識の構築が行われ、対面授業におけるアクティブラーニング型の活動において、十分な学習が行われた。ここから、十分な事前学習を行うことにより、学生にとっては大学においてはじめて学ぶ内容の、専門外の分野における反転授業も深い学習を行うことが可能であることが示唆されたが、一方で、学習者の事前学習における負荷は高く、授業者の準備負担とともにこの問題への対応に課題が見られた。 なお、最終年度内に研究代表者が科研費を受け入れていない研究機関に転出したため、研究自体は廃止という扱いとなった。
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