平成29年度は,初中等教育における既存の発問研究を整理した。具体的には、歴史的変遷、機能的分類、授業展開との関連、実践的側面に分け、先行研究の体系化を試みた。特に、多くの研究が取り組んだ機能的分類については、「語りかける、評価する、対立・分化をつくる、思考をゆさぶる、思考を発展させる」を中心に3つの主要分類を提示した。 これと同時に大学教育における発問を授業で活用するための4つの観点をまとめた。特に、米国の大学教授法センターが取り組む発問活用教材の調査に基づき、目的、種類、学習の促進、応答への対応という4つを抽出した。発問の種類については、対比による発問、順序性のある発問、その他の発問の大きく3つの分類できる。対比による発問には、オープンとクローズ、発散と収束、単純と複雑、全体と個別などがある。順序性のある発問には、簡単から難解、一般から特殊、過去から将来などがある。その他の発問には、思考実験、省察と展望、構造化、明確化、複雑化、問答法(ソクラテスメソッド)などがある。 また、単に発問を用意するだけではなく、それらを用いて学生の学習を促進することも重要である。これについて北米の取り組みをまとめると、待ち時間をつくる、シンク・ペア・シェア、小グループ活動、簡単にはじめる、学生の指名の5つに分類できる。発問に個人で応答するだけではなく、グループで議論をした後に応答したり、応答前に内容を書き留めたり一人で考える時間を確保することの重要さを指摘している。さらに、学生の応答に対する教員の対応も学習の促進において重要である。その方法は、支持的態度、確認(表面的・部分的な応答に追加の応答を促すこと)、調整と再焦点化、リダイレクト、パラフレーズの5つに分類できる。 本研究は一定の成果を示したものの、発問の活用には教材の活用が重要であり、今後の課題として教材と発問を統合する研究の必要性を示した。
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