1.現代の学校や保育園・幼稚園が抱える深刻なトラブルとして、学校周辺の近隣住民からの苦情やクレームに関する事案も多くある。「成長過程にある子どものことだから大目に見る」という寛容性は一部では残っているが、他方で住民からは「我慢にも限界がある」と感じることも少なくない。「子どもの発達・学習権の保障」と「隣人住居の平穏という人格権の保障」を、どうやって両立させていくことが可能だろうか。学校や保育園・幼稚園などを、ゴミ焼却場や精神病院などの、住民にとって望ましくないと考える公共施設=「迷惑施設」あるいはNIMBY(ニンビー)(not in my backyard、私の裏庭には作らないで)にさせないために、どのような改善策を考案していくかが、必要かつ喫緊の課題である。 2.今年度は研究実績をまとめて『迷惑施設としての学校―近隣トラブル解決の処方箋』(時事通信社、2017年6月発刊、204頁)として出版することができた。この本でのポイントは2つある。トラブル解決の主役は、学校の教職員ではなく当事者としての子ども(児童生徒)であること、学校・園も町内会に入ろう、ということである。いずれも「主体性」と「当事者性」を自覚し、双方向で打開の道を探ることの提案である。 3.これをもとに、さらに実態調査を重ねた。長野県立松本深志高校の生徒たちが、学校から出る音のトラブルを近隣住民(町内会)との話し合いの中で解決し始めている「鼎談深志」の取り組みがあり、建設反対運動で消えそうになっていた保育園が、話し合いを重ね、かつ町内会の一員になることで設立にこぎつけるなどの事例があることが分かった。「2」で述べたことの具体的な表れである。これに関する私の論稿を集めて『学校・園の近隣トラブルを考える(2)~「迷惑施設としての学校・園からの脱出方法』(B5版、20頁)のリーフレットを作成した。
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