本課題研究は、途上国における教師教育者養成・研修モデルを共同開発するための基礎的・予備的研究であった。教育立国として成功した日本にはその成果を国際社会に還元する責務があり、すでに途上国の教育制度・課程の構築や現職教員の研修については一定の協力実績がある。さらに、教育改善を自律的に継続できる体制づくりと、教員養成の高度化(高等教育化)に応じた支援が求められており、本研究では、「良き教師教育者が良き学校教員を育てる」との考えに基づいて、教師教育者(とりわけ、大学における教員養成担当者)の養成と研修に着目した。教師教育者の養成・研修はこれまでの国際協力において十分に対応できていなかった領域であり、途上国の教育的質の向上に資する自律的持続的システムとなりうるものであるため、開発的研究が求められているところである。 成果は次の通りである。すでに協力要請のあったドミニカ共和国のサントドミンゴ自治大学及びカンボジアの王立プノンペン大学を訪れて、具体的な共同研究の調整を行った。また、研修内容として、①教職課程研究と教職課程担当教員養成、②専門職の養成・研修方法としてのケースメソッド開発、③授業研究を中心とした教師教育者研修プログラムの開発と実践の三つを立て、それぞれ国内外の研究者とサブ研究グループを形成した。①については、フロリダ州立大学のプレFD担当者を別経費で招聘し、TA研修ワークショップを開催するとともに、広島大学の「教職課程担当教員養成プログラム」の実施を通して内容の精査を試みた。また、②については、ミネソタ大学を訪問し教師教育におけるケースメソッドの活用を進めているサトー教授と今後の共同研究の打ち合わせを行った。③については、サントドミンゴ自治大学において授業研究ワークショップを行った。これらの試行を基礎としてさらに開発的研究を進める。
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