平成27年度の研究として、平成28年に施行された障害者差別解消法とその合理的配慮の不提供の禁止の義務化(国公立)と努力義務(私立)に関する、全国29の歯科大学、歯学部の実態を調査した。 平成28年度は、歯科医学教育の実際を鑑み、実際の障害学生をシミュレートした実習を想定し、本学学生の協力を得て障害の中の肢体不自由者(下肢不自由者)を対象とした実習を行い調査した。実際には教育用診療ユニットを試作し学生に実際に使用してもらい実習効果を検討した。フットスイッチにあたる部分をすべて机上の装置と連動させ、タービンのスイッチとしては上腕部に巻きつける形のスイッチを用い、脇を占めることでon/offを行うシステムとした。また手用のエンジンも回転数を机上の調節器を使用し、バキュームなども同様に机上のスイッチにて調節した。学生には車椅子にてすべての操作を行わせた。実施内容は、マネキンを用いての窩洞形成や超音波スケーラーによるスケーリング等の実際の歯学部の学生が行うファントーム実習の一部を行わせた。その結果、実習開始当初は若干の使用時の戸惑いのような感はあったものの、機器に馴染むことにより良好に実習が行えるようになった。実際の窩洞形成やスケーリングの状況もフットスイッチを使用した実習内容と比較しても明らかな差異は見られなかった。また実習後のアンケート結果からも、フットスイッチを使用した通常の窩洞形成・スケーリング実習と比較しても、体感的にも大きな差異はなかった。 昨年度の調査結果からも、すでに法制化された障害者差別解消法に関して十分に理解していると回答した歯科大学・歯学部は6校と少なく、機会平等の観点に則った障害者に対する適切な対応が実施されない可能性が懸念された一方で、今年度の実施結果が示すように、個々の障害に対する教育の考え、機器の開発が、現状での懸念を解消してくれる可能性も示唆された。
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