本研究は、近年になって新たに成立・展開してきた「子育て支援」という領域について、これを制度的な「組織フィールド」(=「業界」)として捉え、①なぜこのような業界が成立してきたのか、②この業界はどのようなアクターによって構成されまたそのロジック・戦略はどのようなものか、③アクターごとの領域(管轄権)をめぐる関係性はどのようなものかという課題について、行政文書・メディアなどを対象とした計量テキスト分析、各アクターへのインタビュー、ネットワーク分析などの定量的・定性的な手法から分析を試み、教育・福祉・医療・心理など既存の領域が交差するメカニズムの一端を解明することを目的とした。すなわち本研究は、新たに成立しつつある業界を分析対象を取り上げ、またそれをこれまでほとんど実証分析に援用されてこなかった(新)制度学派を中心とした視座と方法論から考察することを試みたものである。 具体的には、子育て支援関連の全国組織について各組織のHPおよび出版物を用いて設立状況や組織の特徴を調査し、全国的な子育て支援政策の変遷について分析を進めた。また、山形県の「子育て支援」の取り組みの現状とこれまでの「次世代育成支援計画」の内容を、子育て支援関連のNPO法人、放課後児童クラブに関係する項目を中心に整理した。また、山形県の子育て支援NPOの代表や、福島市・仙台市で子育て支援に取り組む小規模保育施設の代表など、複数のアクターにインタビュー調査を行い、これらの 調査結果と昨年度実施した福島県内で子育て支援に取り組む幼稚園・認定こども園園長へのインタビュー調査の分析結果をつき合わせ、大学紀要・最終報告書にまとめた。
|