本研究の目的は、タイ人ムスリム留学生を対象に、近隣イスラーム圏であり文化的共通性も高いマレーシア留学の実態について、送り出し国と受入れ国の相互関係を踏まえて実証的に明らかにし、マレー・イスラーム文化圏を軸とした新たな留学ネットワークの構造的解明をはかることにある。本研究が目指す東南アジアの〔域内イスラーム文化圏における留学現象の構造的解明〕は、単に研究の未開拓領域を埋めるのみならず、従来の〔途上から先進文化圏へと向かう従属論的留学モデル〕とは異なり、ASEAN 地域統合やグローバル化の進展により文化・人的交流の機会が飛躍的に増大する中、域内において留学現象がいかなる自律性のもとに発展しうるのかについて新たな理論的視座を提供しうる点で革新的であるといえる。 最終年度にあたる平成29年度には、補足調査の実施と研究の総括をすることにあった。初年度の現地調査で得た情報で一般的に知られていないタイムスリム留学生のインドネシア留学について調べること、およびタイ人留学生派遣に中心的な役割を持っているタイ外務省の担当官に対し、現地調査を実施した。具体的にはジョグジャカルタに本部に持つムハマディヤ財団の教育部、そして、ジョグジャカルタ市内の財団の関連大学を訪問し、大学関係者および在学中のタイ人ムスリム留学生に対し、インタビューを行った。 研究成果を関連する学会において日本語および英語での研究発表を行った。
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