本研究は、経済学と教育学の学際的な共同研究により、従来の教育開発政策・プロジェクト評価の課題を明らかにし、途上国における教育開発がどのようにして生徒の学力や教員の教授法の変化に結び付くかという理論的枠組みとその実証分析の方法を提案することを主な目的としている。従来の教育開発評価の課題を検討するため、経済学者や開発援助機関が実施した定量的な評価(ランダム化比較試験によるインパクト評価等)やモニタリング・プロセス評価の分析方法を確認した。分析対象として、世界銀行、国際協力機構(JICA)、NGOがインドネシア、インド、ケニア、エチオピア、ブルキナファソ、ニジェール等で実施した教員研修や住民参加型の教育プロジェクトを選んだ。この結果を参考に、エチオピアでJICAが実施している教員研修プロジェクトを対象として、教員研修や教材の活用が教員の授業方法や生徒の授業参加をどのように改善し、生徒の学力に結び付くかという仮説を設定し、その仮説を検証するための指標とその指標を収集するためのツール(授業観察、質問紙調査)について検討を行った。この研究成果の一部は、JICAで実施されたセミナーで発表されるとともに、エチオピアのプロジェクト評価の分析ツールに反映された。今後は、エチオピアのプロジェクト評価の結果を学会で発表するとともに、JICAの教育開発プロジェクト評価の方針に本研究成果が取り入れられることが期待される。
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