研究課題/領域番号 |
15K13205
|
研究機関 | 広島大学 |
研究代表者 |
村澤 昌崇 広島大学, 高等教育研究開発センター, 准教授 (00284224)
|
研究分担者 |
森 朋子 関西大学, 教育推進部, 教授 (50397767)
安部 有紀子 (小貫) 大阪大学, 全学教育推進機構, 准教授 (30553416)
|
研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
|
キーワード | データ分析 / シミュレーション / IR / 学生調査 |
研究実績の概要 |
本研究は大学の特性に応じた、学生の学習履歴と生活実態データの設計と分析を行うことを目的としている。 28年度は、広島大学で実施されているSERU調査(Student Experience in the Research University:UC Berkeley主催)の整備と分析を進めた。SERU調査は日本では大阪大学と広島大学が参加しており、大阪大学所属の共同研究者と連携を取り、大阪大学と広島大学双方のデータを持ち寄り、学生の出自、多様な活動や学習形態、能力形成との関連を試行的に分析・検討した。このプロセスにおいて、日本固有の問題として、非回答者の多さ(回答率10%前後)が浮上した。昨年度には、学生の任意団体に呼びかけて、SERU調査への参加を促進したが、その実効性は不明である。当初の予定では、学生に調査データの分析結果を還元するための仕組み作りを狙っていたが、このような学生調査アンケート非回答の多発のメカニズムを解明することが先決であると認識し、現在大阪大学と連携して学生情報を(個人情報保護に最大限配慮して)SERUデータにマージし、非回答学生出現の要因分析に取り組んでいる。同時に、非回答を大量の「欠損」と見なし、学生の学籍情報等個人情報をもとに欠損を補完する方法も試み、欠損値を補完したデータによりどこまで解釈が可能な分析結果が得られるかを検討している。 さらに、学生を積極的に大学の活動に包含する試みとしての「学生シンポジウム」(広島大学高等教育研究開発センター主催)の開催を契機として、学生の意識や活動を詳細に把握する必要性が確認された。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
SERU調査を用いた探索的分析は継続的に実施しており、日本固有の問題である「非回答者の多発」については国際的にも関心を集めた。この問題を、単に回答率を上げるという従来のような方法に落とし込むのではなく、「日本固有の非回答の発生メカニズムの解明」という形で新たな学生調査の分析課題化した点は、大きな前進と言える。大阪大学との連携により、この「非回答発生メカニズムの解明」は来年度にUC BerkeleyのCenter For Studies in Higher EducationのResearch and Occasional Seriesとして取りまとめが予定されている。 以上のような状況により、概ね順調に進展していると判断される。
|
今後の研究の推進方策 |
最終年度である平成29年度は、SERU調査にもとづき、「日本固有の非回答(学生)の発生メカニズムの解明」を大阪大学と連携して進める。同時に、非回答学生の非回答部分を「欠損値」と見なし、各種ある欠損値補完法を適用して(疑似)完全データを作成し、分析を行う。この欠損値補完によるデータ分析を通じて、これまでの経験的知見と遜色のない、解釈可能な学生の諸々の行動・意識の実態が明らかにできるかどうかを検討し、非回答や大量欠損が生じても、十分に分析に耐えうる統計分析が可能かどうかを模索する。併せて、初年度に構築した、これら分析結果を学生にフィードバックする仕組みを強化し、エビデンスを学生に還元し、より望ましい学生の学習・生活へと繋がるプログラム開発を目指す。 成果は、UC BerkeleyのCenter For Studies in Higher EducationのResearch and Occasional Seriesとして早急に取りまとめつつ、11月に開催予定のUC BerkeleyのCenter For Studies in Higher Education設立20周年記念大会にても発表する。
|
次年度使用額が生じた理由 |
当初予定していた、共同研究者を交えての研究打ち合わせの回数を減らした。その理由は、平成29年度にアメリカ合衆国で開催されるUC BerkeleyのCenter For Studies in Higher Educationの20周年記念式典に参加し、本科研の成果を報告するための旅費を余分に確保する必要が生じたため。
|
次年度使用額の使用計画 |
引き続き、SERU分析を共同研究者と共に行い、そのための打ち合わせ旅費として使用するとともに、平成29年度にアメリカ合衆国で開催されるUC BerkeleyのCenter For Studies in Higher Educationの20周年記念式典に参加し、本科研の成果を報告するための旅費として使用する。
|