研究課題/領域番号 |
15K13209
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研究機関 | 首都大学東京 |
研究代表者 |
西島 央 首都大学東京, 人文科学研究科(研究院), 准教授 (00311639)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 学校トイレ / 社会疫学 / 公衆衛生 / 学校環境衛生 / 学校建築 |
研究実績の概要 |
平成27年度には、①学校トイレの先行研究の状況、②学校トイレなどに関わる制度・法規程の状況、そして③学校トイレに関する明治期から昭和中期にかけての学校文書の状況を確認することを目的としていた。 第一に、先行研究を調べることによって、学校トイレに関する研究は、これまでほとんどなされていないことがわかったが、その一方で、研究テーマを既存の学術領域に位置づけるならば、公衆衛生や社会疫学の領域に位置づき、また学校においては保健教育や、養護教諭が担当する教育領域など、学校環境衛生の問題などに位置づくことがわかってきた。 第二に、制度や法規程については、上記の範囲で明治期から昭和中期にかけて調査を進めているが、かなり広範囲に及ぶため、そのすべてを見る必要があるのか、学校に関わるところに絞り込んでよいのかを、今後検討していく必要がある。 第三に、学校トイレの学校建築上の発展のようすや、それと並行して、学校の中で子どもたちの衛生状況などへの教師のまなざしの誕生と変化・発展のようすを捉えるべく、適切な学校文書等の歴史資料を調査した。当初、学校建築の発展のしかたの異なる地域として、東京、長野、京都の3箇所を調べる予定であったが、東京と京都には適切な資料が残っていないことと、長野には十分な資料が残っていることがわかった。とくに、明治期の学校建築の図面が、複数の郡の学校文書に残されており、明治中期に、学校建築の法整備が進む前後での学校建築のようすと学校トイレの位置を確認することができた。 また、子どもたちの衛生状況などへの教師のまなざしに関しては、いくつかの小学校に、明治期以降の学校日誌類が保存されていることがわかり、その中から、研究代表者がこれまでにも研究上の関わりをもっていた地域の学校を選んで、次年度以降にていねいな資料蒐集と考察を行っていく予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
「研究実績の概要」に書いたとおり、当初予定していた研究課題のいずれにも取り組むことができたこと、なかでも、今後の研究の中心となる学校文書について、残念ながら資料保存状態の問題から、複数の都道府県での調査はかなわないことがわかったものの、長野県には、それを補ってあまりある資料が保存されていることがわかったことと、学校建築の図面については、写真撮影により蒐集することができたことから、今後の方向性を見定めることもでき、1年目に進めたかったところまでは十分に進めることができたと考えている。
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今後の研究の推進方策 |
本調査研究課題の2年目にあたる平成28年度には、第一に、学校トイレを中心に、学校保健と公衆衛生に関する法制度の整備が明治から昭和中期にかけてどのように展開してきたのかを整理する。 第二に、長野県で蒐集した明治期の学校建築の図面から、学校建築上、学校のトイレがあった場所がどのように展開してきたのかを確認する。 第三に、長野県内のいくつかの小学校に保存されている明治期から昭和中期までの学校日誌類を蒐集し、子どもたちの衛生状況などに関する記述を抜き出して、子どもたちの衛生状況に対する教師のまなざしの誕生と変遷をたどる。 加えて、最終的には発展途上国の学校環境衛生の改善に資することを目的としているので、発展途上国、中でもアフリカの公衆衛生状況と学校の環境衛生状況について、文献等で把握を進める。
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次年度使用額が生じた理由 |
本調査研究課題は、日本の学校建築におけるトイレのあり方の発展と、子どもたちの衛生状況に対する教師のまなざしの誕生と変遷を、学校文書を通して検討することと、その知見をもって、発展途上国、中でも感染症が社会問題となっているアフリカの学校の環境衛生改善に資することを目的としている。 そのため、平成27年度は、主として、日本の明治期から昭和中期までの学校文書の調査を行った。当初予定では、東京、長野、京都の3地域で歴史資料の蒐集を行う予定であったが、東京と京都には、必要とする資料が体系的には残っていないことがわかり、調査を長野だけに絞った。そのため、旅費があまりかからずにすんだ。 また、研究期間の最終年度には、アフリカに学校調査に行くことを予定しており、3年間の総交付額を勘案したとき、初年度と第2年度は、使用額を抑える必要があった。
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次年度使用額の使用計画 |
平成28年度は、長野県内のいくつかの学校での学校日誌類を体系的に蒐集することを予定している。そのための旅費に充てるとともに、平成27年度と合わせて、日本で蒐集をめざしていた歴史資料が一定程度集まると予想されるので、その資料の整理作業に謝金など一定の経費を充てる予定である。 さらに、上述のとおり、最終年度にアフリカに学校調査に行くことを予定しているので、そのために必要な額が残るように配慮しながら使用額を調整する計画である。
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