平成30年度は、本研究課題の最終年度として、今年度の調査研究と研究期間全体を通じての成果をまとめる考察との2点の研究に取り組んだ。 この1年間に行った調査研究としては、平成29年度に行ったガーナ調査等の成果をふまえて、学校外の社会インフラもふまえてアフリカの学校トイレ事情を調査するべく、エチオピアにおいてフィールドワークを行った。具体的には、首都のアディスアベバと隣接する州の合計6校の特徴の異なる学校を訪問して、学校の概要、主な教育内容、トイレと手洗い場の状況と衛生に関わる指導について調査した。その結果、学校のトイレと手洗い場が使えるかどうかは、地域のインフラ状況に大きく左右されていることがわかった。 研究期間全体を通じて、4年間の研究成果をまとめたところ、日本の状況については、予想よりも早く、明治の中頃にはトイレの整備が制度上も求められており、実態が後追い的に整備されていったことがわかった。その一方で、制度上は求められていない手洗い場について、ある時期からトイレや昇降口以外にも設置されるようになっており、その整備過程をたどることが、教師の衛生的なまなざしを探るうえで必要であるという次の課題を見出すに至った。アフリカの状況については、個人で調査したザンビアも含めてガーナとエチオピアの3ヶ国のフィールドワークから、科学の教科には衛生に関する教育内容が含まれているにもかかわらず、トイレや手洗い場の未整備、地域の水道の未整備などから、教育内容を実践できない状況があること、その背景には社会インフラの状況が影響していることがわかった。その結果、衛生意識と衛生的なふるまいが身についていかないのではないかとの考察結果を導き出し、全体としては、「学校教育の社会疫学的研究」のモデル図を作成して、今後のさらなる研究のきっかけを提供するに至った。 以上の成果をまとめた簡易報告書を作成した。
|