本研究は、1990年初頭以来実施してきた日系国際児の文化・言語の継承と文化的アイデンティティ形成に関するこれまでの研究成果に加え、日系国際児からその子ども(以下、「国際児二世」)への文化・言語の継承を把握することにより、国際結婚家族三世代(日本人の親、日系国際児、国際児二世)にわたる、文化・言語の継承のメカニズムおよび文化的アイデンティティ形成についての縦断的研究を集大成し、日系国際児および国際児二世に必要な教育支援について明らかにすることを目的としている。 1. 目的達成のために、インドネシア(デンパサールおよびその近郊)において、8月から9月(約3週間)および3月(2週間半)の2回にわたり、フィールドワークを実施した。日系国際児への半構造化面接、その子ども(国際児二世)の家庭等における参与観察に加え、日本語補習授業校のプレイグループおよび幼稚園の見学、日本人の母親(一世)や教師からの聞き取りをおこない、多面的にデータを収集した。なお、テロ事件の発生によって渡航の安全性に問題が生じたため、当初予定していたドイツにおける調査は実施できなかった。インドネシアにおいて、2回調査をおこなうことによってデータを充実させた。 2. 一部の研究成果について、異文化間教育学会(6月)、日本教育心理学会(10月)、International Association for Cross-Cultural Psychology(7-8月)において学会発表をおこない、さらに、論文(学会誌および大学紀要)にまとめた。また、研究成果(これまでの研究成果も含む)の一部を取り入れ、異文化間教育学大系1の第6章「国際児の教育」を執筆した。 3. 収集したデータをこれまでの研究成果に加え、統合し、インドネシア在住の国際結婚家族三世代を中心に分析をおこない、総合的に検討した上で、研究成果をまとめた。
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