研究課題/領域番号 |
15K13214
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研究機関 | 岡崎女子大学 |
研究代表者 |
白石 さや 岡崎女子大学, 子ども教育学部, 教授 (70288679)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | デジタル世代 / アメリカ西海岸 / 企業間移動 / 家族と友人 / 自宅勤務 / アウトドアライフ / ポピュラーカルチャー / 教育戦略 |
研究実績の概要 |
初年度に最も多くの時間を費やしたのは、文献の読み込みであった。21世紀の新たな文化や社会が生まれてきていることの興奮を禁じ得ない。 アメリカ訪問し現地調査とインタビューを行う予定は予想以上の成果があった。シアトル、サンフランシスコ、サンディエゴ、ロサンジェルスと、西海岸のIT産業地帯を訪れ、同産業の最前線で働くデジタル世代を、各自の家庭に訪問し、家族インタビューを行った。 彼らの生活感覚を形作る背景として、各地域でのIT産業の隆盛の歴史的地理的要因も、現地を訪れることで見聞でき、興味深かった。中でもサンフランシスコという都市は、いわば環太平洋地域の要であり、これまでもアジアからアメリカへの門口であったが、さらに現代では民泊(airbnb)や車の相乗り(uber)など、ネット利用の新規ビジネスモデルの本拠地の地位を占めている。 これらのIT関連分野において働く個々人は、より良い仕事を求めて西海岸一帯ばかりでなく東海岸と西海岸とを縦横に移動し、また仕事の関連で世界のIT企業を訪問する機会も多く、文字通りにグローバル社会で日常生活を過ごしており、常に最新の技術情報に目配りし、新規の分野を開拓する努力をしている。 自宅勤務制度もかなり普及してきており、その場合のチームマネジメントに関する新たな研究専門分野が開発され、大学での授業科目に加わっている。彼らは日本でのIT産業との仕事上の関連も緊密であり、日本の実態への関心も高く、むしろ日本における開発研究に関する知識も得ることができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
デジタル世代の仕事と日常生活、特に家族との関係に関する実態が、かなり具体的に把握できた。 初年度に予定していた上海訪問予定は、今年度は残念ながら間際になってキャンセルとなり、その分の予算が次年度繰り越しとなったが、2016年8月のハワイでの研究会で再調整の予定である。国際関係の微妙さが影響した。 高い企業間・地域間移動と、激変する最前線の産業分野を支える人々は、個人差が大きいとはいえ、かなり、高い不安や緊張状態にある場合もある。 自宅勤務も、当初の自由な仕事環境という概念を維持している分野と、むしろ堅牢なチームマネジメントが発達しており、オフィス勤務を望む声もあった。
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今後の研究の推進方策 |
アメリカ西海岸を中心としての新しい企業活動や勤務状況、それにともなう個々人の生活がみえてきた。日本に関する興味深い情報も得ることができたので、今後は、初年度に得た知識や知見が、アメリカのデジタル世代に特異な現象であるのか、他の欧州やアジア各地域のデジタル世代にも共通する現象であるのか、さらに追求したい。 彼らの移動の多い仕事や生活の中から、家族、特に子どもは何よりも大切な宝物のように扱われており、子どもの健康で豊かな心身の発育や、激変する不透明な将来に備えての心配りへの感心の高さが把握できた。そのことも、どの程度に世界の他の地域で共通するのか否か、探求を進めたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
初年度に予定していた中国の研究者との交流計画に沿い、上海の復旦大学を9月に訪問し、レクチャーとその後の研究会を企画していたが、日中関係の緊張を反映して延期となったため、そのための予算としてあった交通費及び滞在費の合計である20万円余を、次年度に繰り越した。
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次年度使用額の使用計画 |
2016年8月のハワイ研究大会で、上海側の担当者と会う予定であり、そこで再企画するか、むしろ日本に招請して違憲。情報交換のための研究会を開催するか検討する。
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