本研究活動は、研究期間全体を通じて海外研究者(主にアメリカ)からの全面的な研究協力のもと共に取り組む国際共同研究に基づいている。背景には、年々巧妙化する会計不正に対する教育上の取り組みは、一国の問題というよりもむしろ、世界共通の問題として認識す段階にあるという海外研究者と共通の問題意識があった。 研究初年度(平成27年度)においては、文献並びに資料収集によるグローバル企業の会計不正事例の考察を行った。学術的成果として、国際資本市場に深刻な影響を及ぼしたグローバル企業4社の会計不正事例(アメリカ、日本、ヨーロッパ、中国)の特徴を整理した上で比較検討を行った英文論文(共著)を国際ジャーナルに刊行した。 研究2年度(平成28年度)においては、初年度の研究論文を基礎とし、企業実務を担う人材の会計不正抑止という観点で活動を進め、次年度のケーススタディ素案の作成に取り組んだ。会計教育に対する社会的ニーズを踏まえ、倫理の信念と行動の関係性で教育環境を整える意義をまとめた和文論文(単著)を学会機関誌で刊行した。 研究最終年度(平成29年度)は、過去2年間で明らかになった会計不正事例に関する特徴やちがいの整理と倫理教育環境の重要性を反映・開発を進めたケーススタディ案を用いて教育的実験を実行し、その傾向を分析した。対象は、アジア地域の複数の国々の大学生と社会人とし、会計不正に直面した若者の行動パターンやプロセスを把握すべく努めた。 教育的実験において、例えば、会計に限らず犯罪に対する強い嫌悪感の表れ、会計不正の認識よりも自らの社会的立場を守ろうとする意識や行動などが確認された。 現在、海外研究者と協力して開発したケーススタディ案に教育的実験の結果を反映し、本研究の目的であるグローバル教材へと発展させる作業を進め、並行してとりまとめた学術的成果を国際ジャーナル等で公表するべく準備している。
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