カンボジアを事例国として、保護者の学習支援活動における具体的な行動及びその資源、子供の学習環境や学習意欲を詳細に明らかにし、これらの要素と学習到達度の関係について解明することを目的としたものである。 本研究の最終年次では、データ収集・管理、分析を行った。小学校学校長、教員、保護者及び第3学年の児童を対象とした4種類の質問票、算数及びクメール語の学力テストの各項目について、カンボジアのコンサルタントと共に調査を行った。調査準備として、サンプリングや調査手順についても協議を重ね、6月から8月にかけて調査を実施、同時に8月末にはデータ入力も終了した。11月から12月には、データの質担保のため、データ確認及び管理を行った。その間行った予備分析を元に、1月には、カンポット州で抽出した校長、教員、保護者と児童にインタビュー調査を行った。 研究期間全体の主な成果について、国際的に懸念されている通り、対象となった4州から抽出された約1100名の第3学年児童の学力(算数及びクメール語)は低く、カンボジア国で行われる全国テストの内容は、約3分の1程度の理解に留まることが明らかとなった。また保護者との関係については、所得と学力は仮説通り、正の相関関係がある事が確認された。保護者の具体的学習支援については、「宿題をやったかきく」「宿題を手伝う」「宿題の答え合わせをする」等ほぼ全て、学力とは正の方向に相関関係があり、特に「類似問題をやらせる」「宿題のチェックや答え合わせ」が一番関係が高かった。教育に関心が高い保護者は多くの支援活動を行う傾向にある一方、学力への効果については、教育投資(金銭的サポート)がされた時の方が高い事が分かった。今後論文執筆を行い、学習格差に関し、政策示唆を進めると共に、学校を基盤とした保護者による学習や生活関与における活動を推進するなど、国際コミュニティへの示唆も促していく。
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