本研究の目的は、保健体育科における教員採用選考試験の動向を把握するとともに、正規採用され実際に学校現場に勤務している本学出身の学生を追跡調査することで、学び続ける保健体育科教員の養成及び育成についての一貫した教育プログラムについて提案するものである。平成30年度においては、この目的を達成するために次の3点について、検討、研究を進めた。 1「教員採用選考試験の内容について、保健体育科に特化して調査・分析する」について、「教員採用試験対 策シリーズ・保健体育科」の47都道府県の専門教養(保健体育)の試験問題を調査対象とし、受験区分が高等学校及び中学校対象の問題の各設問を、意味のまとまった設問ごとに区切り、KJ法を用いて分類した。 2 「本学出身の若手教員へのインタビュー調査」について継続して実施し、質的分析を行った。採用後に困難を感じる事項で顕著であったのは、実際に教師自身が経験してきた高等学校の実態と、赴任した高等学校の生徒の実態との違いに対する戸惑いが大きいということが挙げられる。また、保健体育科教員としての採用区分ではあったが、特別支援学級の担任を任されるといった事案があり、その特別支援教育に対する自治体での事前の研修等がなされていない実態も明らかになった。 3 「全国47都道府県の教育委員会に対する初任者研修についての質問紙調査」について、回収を進め、最終的に41の自治体から回収することができた。質問紙調査を依頼し回収する過程で、各自治体毎に初任者研修の所管に違いがあること、教育研修センター又は教員研修センターを有しながらも、保健体育科専門の指導主事が在駐していない自治体も見られることが把握できた。また、集計の結果、教員養成大学及び教職課程を有する一般大学と連携した初任者研修を実施している自治体は10%未満といった実態が明らかになった。
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