研究課題/領域番号 |
15K13222
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研究機関 | 上越教育大学 |
研究代表者 |
梅野 正信 上越教育大学, 学校教育研究科(研究院), 教授 (50203584)
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研究分担者 |
井上 奈穂 鳴門教育大学, その他の研究科, 准教授 (00580747)
福田 喜彦 愛媛大学, 教育学部, 准教授 (30510888)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 市民性教育 / 東アジア / 判決書教材 / 人権教育 / 社会科授業 |
研究実績の概要 |
東アジアでは,21世紀を生きる子どもたちに向けて,「市民性」を育成する社会科授業が模索されている。例えば,日本社会科教育学会や全国社会科教育学会をはじめ,社会科教育を中心的な研究テーマとする学会においても,東アジアを意識したシンポジウムが何度も開催され,そのなかで,新たな「市民性」を構築することが共通の課題となっている。しかし,現実には,東アジアの国々の目指す志向性は必ずしも一致していないため,政治的な体制に教育のあり方が左右されている傾向がある。特に,歴史教育を包含する社会科教育においては,領土問題や戦後補償をめぐる問題も重なって,その傾向が顕著である。では,東アジアにおいて共通の価値観をもった「市民性」を育成する可能性はないのだろうか。これまでにも歴史教育の分野では共通教材を開発することでお互いの歴史への理解を深めてきた。しかし,現時点では,歴史の溝を埋める段階には至ってはいない。こうした学術的背景から本研究では,東アジアにおいて追究すべき「市民性」を育成する授業モデルとして,「人権教育」を核にした社会科授業を構築することを検討する。本研究では,「人権教育」「市民性」「社会科授業」という3つのキーワードをもとにして,日本・中国・韓国の学校現場でのリサーチから理論的枠組みを導出し,社会科授業のパースペクティブのモデル化によって,人権教育を核にした「東アジア型」社会科授業を構築する。本研究は,(1)東アジアの社会科授業を「人権教育」を核に据えて分析する研究の方法論,(2)東アジアの社会科授業を教師と子どもの関係性から解明する研究の対象,(3)東アジアの社会科授業を理論と実践の双方から構築する研究成果の還元nの3点において斬新さとチャンレジ性を有している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究では,3か年の研究期間で,(1)初年度は,日本・中国・韓国での文献・アンケート調査を実施すること,(2)次年度は,調査結果をもとに,学校現場における人権教育の実際とそこで育成される「市民性」の具体像を授業観察やインタビュー調査から比較・検討すること,(3)最終年度は,(1)(2)をもとに,「東アジア型」社会科授業のパースペクティブをモデル化し,研究成果として国内外の学会などで報告することの3点をもとに所定の研究成果を得たい。本年度は,(1)東アジアで模索されている「市民性」を文献やアンケート調査でリサーチし,日本・中国・韓国の社会科教育に関する文献を検討し,「市民性」について共通理解を図り,それをもとに学校現場へアンケート調査等を実施すること,(2)東アジアの研究者や実践者との連携を図り,授業分析の枠組みを検討し,日本・中国・韓国の社会科教育に関わる研究者や実践者と研究交流を図り,「市民性」に対する東アジア各国の取り組みについて意見を交換し,それらを支える授業分析の枠組みを抽出して,学会や研究会などで報告することの2点をもとに,研究を進めた。
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今後の研究の推進方策 |
本研究では,研究テーマとして掲げた「「判決書教材」を活用した「市民性」を育成する東アジア型社会科授業の分析的研究」を,(1)日本・中国・韓国における「市民性」の比較・検討のための枠組みの分析,(2)日本・中国・韓国における「人権教育」の比較・検討のための枠組みの分析,(3)日本・中国・韓国における「社会科授業」の比較・検討のための枠組みの構築,(4)(1)~(3)をもとにした文献・アンケート調査等の結果の検証(学校現場における社会科授業の観察と教師へのインタビューの実施) ,(5)構築された枠組みとその検証結果を踏まえた「東アジア型」社会科授業のパースペクティブのモデル化,の5つの段階で明らかにする。本年度は,(1)~(3)を中心に研究を進めた。今後は,次年度に向けて,(4)の作業に移行できるように収集した資料の分析を行う必要がある。
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