研究課題/領域番号 |
15K13223
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研究機関 | 信州大学 |
研究代表者 |
渡辺 敏明 信州大学, 学術研究院教育学系, 准教授 (90220904)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 学校体育 / 小学校体育科 / 体つくり運動 / スポーツ運動学 / 運動アナロゴン / 促発指導 / 動感 |
研究実績の概要 |
子どもの体力・運動能力の低下が注目されるようになり,その改善策として子どもの発達段階に応じた「体つくり運動」の研究及び授業実践が強い関心を集めている。従来,学習指導要領の例示に基づく教材配置から学習活動を推進・充実する工夫が行われてきたが,その多くが個々の動きの学習を集めて「構成化(体力トレーニング)」しようとする傾向が強く,学習内容の意味付けや発展可能性については着目されてこなかった。そこで,本研究では,小学校体育科における「体つくり運動」の授業を改善・充実するために,研究者によって開発された教材及び学習指導モデルを,運動アナロゴンの視点から修正・体系化して構築することを目的とした。初年度である平成27年は,学習指導の大きな体系を運動アナロゴンの視点から設計するために,(1)「コアな運動」を配列した学習指導モデルの開発に向けたプログラム(プロトタイプ)をスポーツ運動学の視点から作成,(2)複数の学校現場,N県体力向上事業及び教員研修講座等の機会を活用してプログラムを実践,(3)実践の観察(印象分析)に加え,子どもと教員の双方へのアンケート及び質的インタビューから,子どもにとって魅力的な運動にするためのプログラム構成の有効性と改善点を検討した。(4)実践の観察(印象分析)から,プログラムを5層構成化することで,「学習の勢いと良い雰囲気をつくり出せること」に加えて,「運動発生を促せること」が確認され,動きの学習に対して有効に働いていることが明らかとなった。アンケート分析では,採用した運動に違和感なく楽しく取り組めたことで,「子どもにとって魅力的なプログラムであること」が明らかとなるとともに,改善点の示唆も得られた。今後の課題として,動き方の質的評価の方法について検討を進める必要性が明らかとなった。この研究成果は,「日本スポーツ教育学会第35回記念国際大会」において発表した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成27年度は,「コアな運動」を配列した大きな体系を構築することに向けたプログラム(プロトタイプ)の作成と成果検証に取り組んだ。まず,「体つくり運動」における学習のスポーツ運動へのつながりや発展可能性を文献レビュー及び教員・学識研究者への質的インタビューから確認して,学習のゴールとなる運動の抽出と,その中核的な動感を持つ「コアな運動」を配列した大きな体系を検討した。その上で,研究者によって開発された教材群をもとに運動アナロゴンの視点から学習指導モデル(プログラム)を作成した。N県内の複数の小学校でプレ実践を行ったところ,子どもの実態として動きの学習に向けた動感が育っていない事例が確認された。そこで,プログラムを5層構成化するとともに,学習の道しるべとなる教材配列へと再構成して,学校現場,N県体力向上事業及び教員研修講座等で実践した。実践の観察(印象分析)に加え,子どもと教員の双方へのアンケート及び質的インタビューから,子どもにとって魅力的な運動にするためのプログラム構成の有効性と改善点の検討を行うことができた。
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今後の研究の推進方策 |
平成27年度に続き,大きな体系の構築を進めるとともに授業単元の作成を行う。学習指導モデルの開発には,子どもの発達段階に応じた運動能力の実態を把握しながら検討を進めることが重要になる。そのため,設計した学習指導モデルを教育現場でどのように用いるかを実践的に確認するとともに,国内外の研究動向との対比において日本の学校教育に適したプログラム・教材開発の指針を得ることで日本の教育現場で使用できる教材開発につなげたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
今年度未使用額が生じた理由は,本研究計画の基盤となる「子どもの発達段階に応じた運動能力の実態把握」のために,当初予定していたよりも多くの現場で実践(調査)を行う必要が生じたことに伴い,国内外の調査・研究の一部を次年度に繰り越したためである。
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次年度使用額の使用計画 |
平成28年度請求額と合わせて,調査・研究のための旅費として使用する。
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