研究実績の概要 |
研究の最終年度となる平成29年度は,前年度までの研究成果を踏まえ,低学年から高学年へと展開される体つくり運動の「大きな体系」の構築及び多層化された学習指導モデルの開発を進めて,特に領域のスタートとなる低・中学年(単元)の作成に取り組んだ。教育現場で有用とされるプログラム・教材開発とするために,小学校教員の実態調査及び児童(学習者)の発達段階に応じた運動能力の実態を観察把握(印象分析)しながら実践的に検討を進めた。小学校教員の実態調査を行う中で,とくに多様な動きをつくる運動遊びにおける「徒手で行う運動遊び」の教材づくりが困難となっている問題が確認された。この問題を解消化するために「徒手で行う運動遊び」に焦点化した学習教材(プログラム)をスポーツ運動学に基づいた5層構成化の視点から作成し,複数の学校現場・N県体力向上事業等の機会を活用して実践した。実践では促発志向分析(観察・交信・代行・処方)を通して学習指導を行い,実践の印象分析から児童の形成位相はなじみの地平にあって違和感や嫌悪感なく学習活動に取り組んでいること,運動の発生様相として偶発位相にあることが確認された。また,児童の記述したアンケート分析からも,教材構成内容が運動発生の触発につながったことが確認された。小学校教師によるプログラム実践後のアンケートから,学習教材(プログラム)の有効性が確認されるとともに,改善点の示唆も得ることができた。 今後の課題として,開発された学習教材(プログラム)を小学校体育科(低・中学年)の単元の中で実践的に検証していく必要性が確認された。これらの研究成果の一部は,「日本スポーツ教育学会第 37回学会大会」において発表するとともに,『小学校体育ジャーナル(87)』において紹介した。
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