被験者の実験前の打鍵状況の現状把握のための第1回ビデオ撮影、被験者共通学習メニューによる基礎練習後の第2回ビデオ撮影、被験者の改善点に対応した個別学習メニューによる基礎練習後の第3回ビデオ撮影のすべてを終了した。そして、6名の被験者の打鍵時の手・指・関節の悪癖の改善状況を検証するため、悪癖が見られる被験者個々の抽出点の比較表を作成し、整理した。またこれにあたり、ヒートマップ(グラフ化したものを含む)、動作追尾を基に打鍵時の各指関節と手首の状態をプロットしたボーンスティック、および第1回実験から第3回実験のビデオ撮影の動画から作製した速度調整可能な3視点動画(正面・左・右)同時再生ツール(協力:公立はこだて未来大学竹川研究室)を用いて、より正確な検証を行った。 これらのデータを分析した結果、被験者個々に改善状況に差異が見られたものの、悪癖を改善することにより「ピアノ演奏基礎能力」(手の安定性と円滑な運指能力)の獲得に向う傾向を確認した。しかし、6名の被験者個々に改善状況には、年齢と学習経験、打鍵改善への自覚など、アンケートから垣間見ることができる被験者それぞれの特徴とも関連している。被験者に1年3ヶ月という実験期間を用いて悪癖改善のための2つのメニューによる基礎訓練をさせたが、第1回実験終了後から第2回実験までの期間に提示した「共通学習メニュー」(被験者共通)を使った基礎練習に加え、第2回実験終了後から第3回実験までの期間に提示した「個別学習メニュー」(被験者個々の悪癖に対応)を加えることが、悪癖の改善効果には必要であることを確認、これは、ピアノ指導者がピアノ学習者の個々の打鍵状況を十分に把握し、学習者個々に対応する「個別学習メニュー」を考案し、打鍵時における悪癖改善の指導に活用する重要性を裏付けるものである。
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