研究課題/領域番号 |
15K13228
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研究機関 | 岡山大学 |
研究代表者 |
清田 哲男 岡山大学, 教育学研究科(研究院), 講師 (20550841)
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研究分担者 |
上田 久利 岡山大学, 教育学研究科(研究院), 教授 (50273959)
大橋 功 岡山大学, 教育学研究科(研究院), 教授 (70268126)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | ユニバーサルデザイン / 美術教育 / 小学校・中学校連携カリキュラム / 創造性 / 自己受容 / 共感性 / 観察力 / 社会参画意識 |
研究実績の概要 |
1.平成27年度の研究実績 本研究は、美術教育で培うデザイン分野の学習を、ユニバーサルデザイン(以下、UD と表記)の考え方を基軸とした「UD 教育カリキュラム」での実践を介して、学校教育全体などで計画的に行う実践研究である。本カリキュラムで児童・生徒に培いたい力は、「個を尊重し、よりよく生きる力」や「自ら課題を見出し、解決に向けて思考し、実践できる力」である。そのために、多様な他者や自分自身の個性や価値を認め合える教育活動を広く普及するためのカリキュラム構成も本研究の重要な目的である。平成27年度の研究では、これまでの研究で構築している「試行用UD 学習カリキュラム(以下、「試行カリ」と表記)」を、中学校を中心に実践し、その実践成果を9回の研修会で検討した。 2.平成27年度の研究内容 (1)児童・生徒に培う力の焦点化 検討の中で、より児童・生徒の実態に即するため、「試行カリ」に新たに加えるべき題材や、教材の扱い方について、試行カリキュラム実践担当の研究協力者と共に進めた。その中で「試行カリ」で培うべき力を、自己受容、共感性、観察力、社会参画意識の4つにより焦点化できるよう再構成を行った。美術教育内での実践あるため、造形要素への拘り、あるいは知識理解を伴う4つの力である。また、これらの力が、本カリキュラムで醸成されたかについては、児童・生徒へのアンケートを実施し、1年毎に確認できるようにした。 (2)第二次試行カリキュラムの新たな意義付け (1)の力は、本来のUDの考え方を基軸としながらもより広がりのある考え方であることから、第二次試行カリキュラムを「創造性が社会と出会う美術教育(NCS The Art Education : Nurturing Creativity Through Encounters with Society)(以下、NCSと表記)」と意義付けた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
中学校を中心に、試行カリキュラム実践担当の研究協力者(現在10名)から動画、画像で授業実践の提供があり、1年間で神戸、岡山等で合計9回の研究会を開催している。研究を重ねる中で、中学校や生徒の実態に即した、教材の精選や新たな題材の提案を通じて、培いたい力のポイントがより絞り込まれてきた。2年後には、平成27年度に中学1年生であった生徒が3年生になり、中学3年間でのNCSの成果が期待される。 また、科研費によって購入した教材を基にした「試行カリ」内の題材の再構成による本研究が、学校現場への貢献、或は児童・生徒への関心意欲を高め、個を尊重する力、課題発見・解決の力の醸成に向けた授業を作り出していることからも、おおむね順調に進展している。 一方、小学校・高等学校での実践では、現在各1名の実践担当の研究協力者が決定しているのみで、まだ実践に至っていない。これまでの中学校でのカリキュラムで、小学校へ移動した方が、より効果が期待できると判断した題材も含め小学校、高等学校へ、NCSを広げるため、平成28年度、29年度と実践を前提に研究をすすめる。加えて、現在、児童・生徒にアンケートを実施しているが、今後、集計および考察を予定している。NCSを実施する前の児童・生徒の状況の早期把握が、今後のNCS構築にとって極めて重要である さらに、平成29年度に第二期試行カリキュラムであるNCSの理論と実践成果をまとめ、学術研究発表、実践研究発表、教員用冊子或は書籍出版に向けた計画も研究協力者と共に行っている。平成27年度では、実践研究発表会を一度実施しただけであるが、今年度以降、定期的にまとめた研究の発表を行う予定である。
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今後の研究の推進方策 |
平成28年度は、NCSの理論構築と、小学校から高等学校までの実践計画、成果との両方をまとめながら、児童・生徒の培う造形要素への拘りや知識理解を伴う4つの力(自己受容、共感性、観察力、社会参画意識)への明確なアプローチを検討する。さらに、実践担当の研究協力者の所属学校の児童・生徒の実態に即して、NCSのパターンをつくり実践し、アンケート調査によって、4つの力と造形要素や知識理解への意欲の醸成の確認を実施する。小学校3校のべ3学年、中学校7学校のべ12学年、高等学校2校のべ2学年での実践を計画している。各学年、1~4題材での実践提供である。 平成29年度は、引き続きNCSの実践研究を、2年ないし3年での成果のまとめ、広く全国へ発信するためのNCSの解説、実践書の編集、発行を計画している。 学術研究・理論研究としては、発達の道程に即した児童・生徒の課題について整理と、社会参画意識の成長をロジャー・ハートの発達モデルをベースに、カリキュラム上での授業の配置等のレイアウトの構築を重点に行う。特に共感性を研究分担者である大橋功教授が、共感性に伴う造形要素について上田久利教授が中心となって研究を行う。成果の発表は、今年度末の第39回美術科教育学会、平成29年度のInSEA(国際美術教育学会)で行い。美術教育関連の学会誌で発表を計画している。 実践担当の研究協力者による実践発表としては、今年度は、8月での神戸市教育課題研究発表会、実践美術教育学会等での発表を計画している。平成29年度では第68回 造形表現・図画工作・美術教育研究全国大会(岡山大会)での研究授業発表を計画している。
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次年度使用額が生じた理由 |
中学校での授業実践で使用する教材費が当初より増えたため、研究計画で予定していた旅費を消耗品に充てることなった。そのことによって余剰金が発生した。次年度は、中学校に加え、さらに小学校、高等学校での教材費が加わることで予定額よりさらに増えることが予想される。そのため、今年度の余剰金によって補填するために、次年度の使用額を生じさせた。 また、今年度予定していたアンケート集計が実施できず、人件費・謝金を使用することが出来なかった。次年度、今年度分を含めて人件費も必要となると予想されるため、次年度の使用額を生じさせた。以上の、主な2つの理由により、次年度の使用額が発生した。
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次年度使用額の使用計画 |
平成27年度未使用の額は204,593円、平成28年度直接経費の額は700,000円である。内、研究代表者の清田が750,000円、研究分担者の上田教授が100,000円、大橋教授が50,000円である。 小学校・中学校・高等学校で使用するカリキュラム内での授業の題材で使用する教材(絵の具、インク、紙粘土、鑑賞用UD・介護用品等)で250,000円程度計画している。データ解析ソフト,30,000円、データ処理用ノートパソコン4台200,000円の購入費を計画している。学会等参加旅費300,000円程度、アンケート集計が実施のための人件費・謝金に2人で12日間お願いして、120,000円程度使用する計画である。
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