ユニバーサルデザインの概念を基軸にした図画工作及び美術の授業を、全国の小・中・高等学校、特別支援学校の教員23名で実践した。本研究は第2次にあたり、第1次研究でこれまでの小、中学校の実践にユニバーサルデザインの概念を意義付けて作成した「試行用UD学習カリキュラム」を検討しつつ、より児童・生徒の「学ぶ力」に焦点化して授業計画、題材作成を行った。授業実践にあたっては、美術教育による個を尊重した心の育みための「4つの育み」の視点(自己の深まり、共感性、深く見つめる、社会への広まり)を基に児童・生徒それぞれの成長に合わせた到達度指標による学習モデルを構成できるシステム「創造性が社会と出会う美術教育モデル Art Education Nurturing Creativity through Encounters with Society(以下、ANCSモデル)」を新たな学習モデルとして構成した。到達度指標は、学習指導要領やR.Maceのユニバーサルデザインの原則、R Hartの「参画のはしご」等を基に、指標に到達したときの児童・生徒の姿をイメージした評価規準として作成した。 ANCSモデルの各題材の到達度指標の達成によって、日常生活にどのような影響が生まれるかについて、小学校から高等学校までの指導生徒にアンケート調査を実施し、その推移について考察を繰り返した。考察では、ANCSモデルにおける題材の配置、育みたい力、日常生活での汎用性等の検討を行った。実施期間は2年半の長期にわたり、児童・生徒の複数学年での「4つの育み」による生活意識への変容を捉えることができた。その結果,表現主題への意識を社会参画へと広げ、再び自己内面へ収束させる題材を繰り返すことが、「4つの育み」の視点への意識と相関することが分かった。その成果を国際美術教育学会や学会論文等で発表した。
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