中学校技術・家庭科,技術分野(以下技術科)において,社会・環境・経済との関係を考えて技術に関わる意思決定を行う能力を育成することは,常に技術の恩恵を受けて生活を営んでいる現代社会で必須となる技術リテラシーを培うために重要である。また,新たな技術が生成される未来の社会を構築するために必要不可欠であり,持続可能な社会を実現する能力育成にも強く結びつく能力であると考えられる。しかし,これまでの技術科は,ものづくりなどの実習活動を中核とした指導方法により,授業で扱う「製作題材」が有する範囲内の知識・技能の習得と活用の学習に留まりがちであった。 本研究課題では,中学校技術科において社会・環境・経済との関係を検討して技術に関わる意思決定を行う能力を育成するため,社会現象・行為をゲーム形式で学習に取り入れるゲーミング手法を援用した指導方法の開発,並びに授業での実践と評価を行うことを試みる。この指導方法が指向するのは,ものづくりなどの実習活動を中核とした指導方法による短所を補完し,多様な学習内容や意思決定の場面を広く取り扱うことのできる中学校技術科の授業開発とする。 本研究課題の結果は以下のように概説できる。(1)技術に関わる意思決定場面に対する技術科教員の意識について検討するための調査を行い,教科書などから抽出した学習場面の必要性と,授業での設定の難易度について検討した。 (2) 技術ガバナンス能力の評価に関する授業における生徒の学習過程を分析し,生徒が技術を評価する思考や検討する実態について検討した。(3) 技術に関わる意思決定を行う学習場面を適切に扱う授業の枠組みとして,「制約条件の分析」「解決策の評価」「解決策の比較・検討」「解決策の決定」を構成し,カード教具を用いた授業を中学3年生172名に実践し,その効果を検証した。
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