研究課題/領域番号 |
15K13239
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研究機関 | 聖心女子大学 |
研究代表者 |
永田 佳之 聖心女子大学, 文学部, 教授 (20280513)
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研究分担者 |
杉原 真晃 聖心女子大学, 文学部, 准教授 (30379028)
西原 直枝 聖心女子大学, 文学部, 講師 (90611129)
曽我 幸代 名古屋市立大学, 大学院人間文化研究科, 准教授 (40758041)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 気候変動教育 / 気候変動 / ESD / 持続可能な開発のための教育 |
研究実績の概要 |
平成28年度の主要な研究目標として次の2点を挙げた。第1に、気候変動教育の教材としてアニメーションを制作すること、第2に学校等で制作したビデオを試験的に使用し、課題を明らかにすることである。前者については、アニメーション作家の協力を得て、コマ撮りアニメーションという手法で、言葉を使用しない約6分のアニメーションを作った。日本のみならず、諸外国でも使用してもらえるように言葉をいっさい使わないワードレスの映像作品が完成した。ストーリーは、当初は気候変動に対する「適応」及び「緩和」を意識したストーリー展開を想定していたが、研究者、実践者(学校教師)及びアーティストによる合宿での討議の末、気候変動という人間の本質にも関わる問題性を重視することとなり、上記の2課題を分けて気候変動という地球規模課題にアプローチするのではなく、その根幹(根っこ)を見据えた作品性を重視することとなった。その結果、日常の様々な喜怒哀楽の全てを覆すような気候変動の本質を示唆した作品「Apple Tree of KIITOS」が完成した。 作品は、研究チーム内での公開を経て、一般にだれもがアクセスできるものとして公開した。またブログ(https://kiitosblog.wordpress.com)も制作し、国内外からの意見を集約できるプラットフォーム作りにも取り組んだ。2017年4月現在、日本やブラジル、チェコ、カナダ等からの感想や意見が寄せられている。 学校においても作品を用いた気候変動に関する授業が複数実践された。小学校中学年や大学の授業において試験的にその有効活用について検討されているが、より多様な学年(発達段階)での試行が求められると言えよう。また、1作目をベースにした2作目への構想も温められつつあり、最終年に向けた準備が構想の段階であるが始まっている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の予定どおり、アニメーションの制作及びその活用という段まで至っている。既存の気候変動に関する教材研究も初年度始めの合宿で検討し、「余白」や「隙間」という工夫がこれからの気候変動教育の教材に求められていることが明らかになったことは、当初に予期しなかった成果であると言える。ただし、アニメーションの「先進」国とも言える諸外国から学ぶことの重要性はまだあると言える。最終年度に活かすためにも、チェコなどの国々の質素だけにアピールする要素を内包した作品からさらに学ぶ必要性を感じている。この点を考慮すれば、「おおむね順調」という自己評価が相応しいと判断する次第である。
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今後の研究の推進方策 |
1つの作品が完成し、その活用の段にある現在、第2作目に向けた制作と活用への意欲が研究チーム内で高まっている。まずは第2年度と同様に、合宿形式で討議を重ね、第1作目の活用上の課題及び第2作目への構想とさらなる活用について吟味する予定である。前半が過ぎた上で見えてきた次の二つの課題にも対応していかねばならない。一つは、当初から目指した価値観レベルでの変容をもたらすような作品は教材というよりも芸術作品としての性格が強く、それを授業という制約的時空でいかに活かすかは実践者側の課題であり、その検討は教育実践一般そのものへの問いかけとして指摘されてよい。第2に、アニメーションという表現媒体を通しての挑戦である本研究にとって、気候変動以外のアニメーションに注目すると、チェコやロシアをはじめとした諸外国の作品からも学ぶ所は少なくないという点である。チェコの絵本などの芸術的センスに学びつつ、こうした先進的な知見を積極的に取り入得るよう、場合によっては現地調査も含めて検討していきたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
第2年度目の主要課題であったアニメーション制作費が相当に抑えられたため。
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次年度使用額の使用計画 |
最終年度は、これまでの研究チームのメンバー以外にも実際に制作したアニメーションを見る学習者も合宿に参加してもらうなど、よりよいアニメーション作品の制作と授業案の構築に役立てていく所存である。
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