研究課題/領域番号 |
15K13240
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研究機関 | 東京女子大学 |
研究代表者 |
大家 まゆみ 東京女子大学, 現代教養学部, 准教授 (00385379)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 小学生 / 順列 / 組合せ / 算数に対する苦手意識 / 暗黙の知能観 |
研究実績の概要 |
小中接続期は算数から数学に教科名が変わる時期であり、特に中学生になると数学に対する苦手意識が強まるとされる。本研究では、中学生の数学に対する苦手意識が生ずるメカニズムを検討する。平成28年度は研究計画の第二年度である。第一年度に中学生を対象に実施した数学に対する動機づけと苦手意識の関係について、第二年度は中学校に入学する直前の小学6年生を対象に検討した。第二年度の成果は、以下の通りである。 1.動機づけと苦手意識尺度の実施:第一年度に作成した尺度を用いた。藤井(1994)およびHopko(2003)の数学不安尺度(Mathematics Anxiety Rating Scale: MARS)を参考に、図表の活用に関する動機づけ尺度(8項目:4件法)を作成した尺度について、小学6年生を対象に実施した。 2.暗黙の知能観 藤井・上淵(2012)を参考に、実体的知能観と増大的知能観尺度を作成した。 3.課題の作成:「場合の数」に関する課題3題(順列1題、組み合わせ2題)を作成し、1、2と共に実施した。 パス解析の結果、組合せ課題の成績は暗黙の知能観に負の影響を及ぼしていた。組合せ課題を理解できた子どもは、増大的知能観すなわち「努力次第で賢さは変わる」という信念を持つ傾向があった。また、遂行回避目標を持っていた子どもは、実体的知能観すなわち「努力しても頭の良さは変わらない」と思い込む傾向があった。一方で、実体的知能観は算数に対する苦手意識に正の影響を及ぼしており、実体的知能観を持っていた子どもは、算数で図や表を用いることに対する苦手意識を強く持っていた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
第一年度には中学生を対象に質問紙調査と事前課題を実施した。この調査は当初の計画では第一年度に実施する予定だったが、前倒しして1年早く実施した。そのため第二年度は、本研究で対象とした「場合の数」に対する動機づけと苦手意識の関係について、中学生と同じ単元を算数科で学習する小学6年生を対象に、第一年度に中学生に実施した質問紙調査と課題を実施した。第二年度には小中接続期に焦点を当てて、中学校に入学する前に算数に対する苦手意識を抱き始める小学6年生を対象に、同様の調査を実施し、成果を日本教授学習心理学会年次大会および31th International Congress of Psychology (ICP2016)に於いて発表した。
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今後の研究の推進方策 |
平成29年度は第一年度、第二年度の成果を論文にまとめ、成果として発表する予定である。また、第二年度の研究成果は国際会議で発表する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
海外の学術雑誌に論文を投稿した際の論文投稿料を、Paypalを通じてクレジットカードで支払った。しかしクレジットカードの支払い明細と紐付するためには、Paypalの決済時の詳細が分かるメール等が必要となった。Paypalを利用する際に、アカウントをPaypalであらかじめ登録する方法と、今回のように利用する都度ごとにゲストユーザーとしてクレジットカード情報を入力して決済する方法があったが、今回は後者を選んだため、Paypalからは決算時の詳細に関する証明が出なかった。このため、論文投稿料に該当する52,407円の残高を次年度に使用することとした。
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次年度使用額の使用計画 |
平成29年5月にスイスに出張し、国際会議で成果を発表する予定がある。海外出張旅費の一部に充当する。
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備考 |
Aleksandra Gajda氏は、平成28年度日本学術振興会外国人特別研究員(欧米短期・第4回)に採用され、研究代表者が受入研究者として招へいした。
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