小学校から中学校になり、算数から数学になると学習意欲を失う子どもが多い。本研究では、小中接続期に単元「場合の数」を学習した後の6年生と中学校で同単元を学習する前の中学2年生が順列・組合せ課題を解く際に、図表の活用に対する動機づけと苦手意識が児童・生徒が用いる方略にどのように影響するかを検討した。研究対象は、首都圏の公立小学校6年生71名(男子43名、女子28名)および公立中学校2年生88名(男子44名、女子44名)であった。6年生と中学2年生には同一の課題をテストとして実施し、6年生は単元「場合の数」の学習後に担任教師が事後テストを実施、中学2年生は単元「場合の数」の学習前に事前テストを実施した。また、図表の活用に関するメタ認知を測定するための尺度を構成する前に、児童の図表に関する不安や苦手意識について、研究に参加している6年生の学級担任の小学校教師1名に(教師歴12年、女性)にインタビュー調査を行った。さらに「図表の活用に対する動機づけ尺度」を作成し、因子分析(一般化された最小二乗法、プロマックス回転)を行った。その結果得られた2因子に対し、第1因子「内発的動機づけ」(4項目:α係数=.73)、第2因子「図表に対する苦手意識」(4項目:α係数=.72)と命名した。次に、図表の活用に対する動機づけおよび事前事後テスト得点と実際に用いた方略の関係について、一元配置分散分析を行った結果、順列課題では「書き出す等」の授業で学習する前の既有知識を用いた方略を使用した児童が、樹形図を用いた児童よりも内発的動機づけが低かった。組み合わせ課題では「書き出す等」の方略を使用した児童が、表を用いた児童よりも図表に対する苦手意識が高かった。乗除法を用いた児童は表を用いた児童よりも図表に対する苦手意識が高かった。一方、中学2年生は使用方略によって図表の活動に対する動機づけに違いは見られなかった。
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