本研究では,いじめ防止対策推進法第22条で規定される学校におけるいじめの防止等対策組織が,管理・運用する総合的な情報管理データベースシステムの開発を目指している。同システムを,データベースト・カウンセリング&ガイダンスシステム(Data Based Counseling&Guidance System)と名付け,DB_CGSと略する。以下,データベースをDBと略記する。平成27年度は,ブラウザベースのDB_CGSポータルの開発,いじめ事案概要DB(概要報告書DB,いじめ被害児童生徒DB,いじめ加害児童生徒DB,事情聴取記録DBを含む),チーム援助モニタリングDBの開発を行った。平成28年度の研究目的は,データベースセキュリティ対策,いじめ防止教育DB,チーム援助シートDB,証拠画像DBの開発を行った。研究成果としては,次の3点が摘できる。 第1に,スタンドアロンのPC内に,暗号化された仮想ドライブにデータベースが保管されるため,安全かつ容易に管理・運用できる。第2に,いじめ事案概要,いじめの防止教育に関する学習指導案,いじめの早期発見・早期対応および課題解決時のチーム援助援助シート,いじめ事案に関連する諸証拠の画像ファイルなどを,Webブラウザから呼び出し,データ入力,検索が容易に行える。第3に,現職教員を対象に,DB_CGSの試用評価を行った。評価結果は,5段階評価で平均値4.5点以上であった。特に,DB_CGSの必要性,操作性,実用性で4.8と高い評価を得た。以上の点から,DB_CGSの学校現場での実用性は,いじめ防止教育,いじめの早期発見・解決,重大事態への対処,ケース会議などの諸活動で十分期待できる。ただし,導入に際しては,商用ソフトの購入のための財源の確保,DB_CGS環境の構築・運用に関するマニュアル作成,校内研修の実施など実務上の課題が残っている。
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