全国で先導的に実践的・体験的学習に取り組んでいる商業科教員を中心にインタビュー調査を行ってきた。当初の計画より多い22校、41名の方から聞き取りを行うことができた。しかし、企業等への聞き取りは3社3名に留まってしまった。その結果から見えてきたのは、生徒に様々な実践に取り組ませる理由として、生徒に何かしら気づきを与えるための「学びの場」として実践を設定しているということである。そして、そこで何を気づかせようとしているのかは教員や学校・地域によって異なってくる。 今回の調査対象のインタビュー調査から先導的に取り組んでいる商業教科教員が実践にあたり指導目標として大切にしていることがいくつか浮かび上がってきた。それは、「チームワークと一体感、広がりをもつこと」、「コミュニケーション(話す・聞く・読む・書く)力の養成」、「授業や勉強(検定取得)を大切にする姿勢」、「自主性や自信を持たせること」、「商業高校としての人材育成」が代表的なものとしてあげられる。また、実践的な学びと商業高校で幅広く取り組んでいる検定指導は、生徒の学びへ向かわせる両輪として機能していることも明らかになった。検定取得に向けた学習と、実践的・体験的な学習とがつながることで一定の効果をあげている。 さらに、こうしたことに気づかせながら最終的には生徒一人ひとりの「進路実現」が最大の目標となっており、高校商業教育を通じて、生徒の将来を考えながら実践を進めている。つまり、先導的な教員は、「商業教育における実践的・体験的な学習を通してキャリア教育につながる指導を行っている」ことが見えてきた。
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