平成28年度は,本研究の目的である聴覚障害者の拍認識に関する音楽テストについて,難度の基準を導入すること,健聴者を対象とする既存の拍認識テストがどれくらい聴覚障害者にも有効なのかについての実験を行い,研究成果を国際会議ならびに論文誌で発表する準備に着手した. 難度の基準については,複雑さの異なるリズムパターン,アクセント有無,音の重畳について有無・音色・強さを変えて拍生成実験を行った.その結果リズムパターンが複雑であることとアクセントがある場合は,聴覚障害者が拍生成を行う上で単純なリズムパターンとアクセントがない場合に比べ有意差があった.音の重畳については個人差が影響していると考えられる.本実験は平成27年度に引き続き,Beat Alignment Test (BAT) を参考として作成したシステムを用いた. 本研究で参考とするBAT ならびに,Beat Expertise Adaptive Test (BEAT) を作成したUCSD の J. Iversen 研究員が連携研究者として訪日した.BEATは,次第に難しくなるリズムパターンを聴いて拍を生成するものであり,BATが実際の音楽を聴いて拍を生成するのに対し,BEATはリズムパターンが直接提示される.聴覚障害者を被験者とするBEATを用いた実験を行い,健聴者との差がみられないこと,リズムパターンの難度が拍生成に有意に関係していることが明らかになった. 難度の基準ならびにBEATを用いた実験については,隔年で行われる国際会議に2018年度に発表し,BEATを用いた実験については英文論文誌にもまとめる計画である.
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